#魔法少女とオッドアイの彼女#
「私がもっと強ければ・・。」
手頃な瓦礫に座り込んでいる少女は一人悪態をつきながら、バッグの中に手を入れては中身を取り出している。
まずはパンや水、12個の数字が円を描くように書かれた小さな丸い物が出てきた。
それから、鉛筆やメモ帳、参加者名簿と書かれた名簿が出てくる。
「これは・・?」
少女は細長い棒のような物をくるくると回し、見つけた突起部分を何となく押してみる。
「わっ、ビックリした・・。」
突然、目に光が飛び込んできて思わず目を細める。
そして、もう一度突起部分を押してみる。
「消えた・・。多分、これがあの男の言っていた『照明道具』ね。」
あの男、キング・リョーナを止めなければ大変なことになる。
そう直感した少女はあの時、危険も顧みず飛び掛っていた。
首輪が反応してから爆発するまでには少しだけ時間がある。
それまでに倒せばいいし、最悪、あの男の至近距離で爆発すれば、あの男もただでは済むまい。
そう考えていたが、現実は違った。
倒すどころか近づくことすらできなかった。あのまま首輪を反応されていたら今頃・・。
「私は・・やはり・・。」
冷静になってあの時のことを思い返す。恐怖で全身が震える感覚を覚える。
少女は如何に自分が無力で無鉄砲で無茶だったかを悟り、落胆していた。
「あの・・溜め息ばっかついてるの、よくないですよ?」
「!?」
突然後ろから声をかけられ少女は足元に広げていた荷物を飛び越して振り返る。
(何で!?気配をまったく感じなかった!?)
少女は戸惑っていた。確かに注意力散漫な状態ではあったが周囲をまったく警戒していなかったワケではない。
それなのにこんな至近距離まで近づかれ、声をかけられるまで目の前の人物のことに気づけなかった。
人によっては、あの時既に自分は死んでいたかもしれない。
少女は突然現れた人物を警戒心を露わにして睨みつける。
「わわっ!ごめんなさいです!ビックリさせるつもりは・・あったような・・なかったような・・ですけど。」
「とにかく、ごめんなさいです!なぞ、反省してるです!」
「貴女・・・何者なの?」
「へっ?なぞは、”なぞ”ですよ。」
なぞと名乗った女性、言動からはとても気配を殺して近づくなんていう芸当ができるように思えない。
しかし彼女はついさっき、それをやってのけた。それもかなり高い練度でだ。
(私でも、あそこまで完璧に気配は消せないのに・・彼女はいったい?)
警戒の眼差しを向け続ける少女をよそに、不思議そうに首を傾げるなぞだった。
「・・あの、まだ怒ってるですか?なぞ、ちゃんと反省してるですぅ・・。」
「・・えっ?」
少女は自分が怒っていると思われていたことが意外だった。
彼女は自分が今し方やったことが、どれだけ凄いことなのか自覚していないのだろうか。
そしてあの時、本人にその気があれば私を殺せていたことも自覚していないのだろうか。
(何なの・・彼女・・。)
少女はじっと彼女の様子を観察する。
左右で瞳の色が違う彼女は、小動物みたいにその瞳をまん丸にしてうるうるとこちらを見つめている。
(・・・気のせい、なのかな?)
その様子を見ていると、とても危険な人物には思えない。
戦士としての自分に自信が無くなっていた少女は、自身の勘を疑いとりあえずは警戒を解くことにした。
「いや、もう怒ってないよ。・・ごめんね。」
少女は優しい口調で笑顔を見せる。
「なぞも謝るです。ごめんなさいです。えと・・」
なぞはぺこりとお辞儀をした後、首を傾げる。
「ミアよ。なぞ・・」
「”なぞちゃん”が、いいです。」
「・・・なぞちゃん。」
「うん、じゃあよろしくです。ミアちゃん。」
「えっ?よろしくって・・。」
少女、ミアは不思議に思って聞き返す。
「なぞ、ミアちゃんと一緒に行くです。ミアちゃんも、なぞと一緒に行くですよね?」
「えっ・・・う、うん、いいよ。」
「やたっ♪やっぱり皆仲良くするのが一番ですっ♪」
なぞは満面の笑みでぴょんぴょんと軽く飛び跳ねて喜びを表現する。
(やっぱり、気のせい・・だよね。)
その様子にミアは、彼女と初めて会った時に感じた感覚を忘れることにした。
「・・で、色々と広げて何やってたですか?」
なぞはミアに問いかける。
「持ち物の確認よ。とりあえず、何が入ってるのか分からないとどう動けばいいかも分からないしね。」
「ほほぉー、ミアちゃんはかしこいです。なぞ、ずっと誰か居ないかなって歩き回ってたですよ。」
「そうなの。・・・そうね、じゃあ一緒に見てみる?」
「うんうん!やるですぅ〜♪」
ミアの誘いに二つ返事で答えたなぞは足早にミアが座っていた傍の瓦礫に腰をかけて、背負っていたバッグをおろす。
(なぞちゃんって、子供みたい・・。)
そんななぞの様子にミアは少し呆れながらも、笑顔で自分が座っていた所に戻り腰をかける。
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