ルーファスは気がつくと建物の中にいた。周りを見回すと剣や斧、槍などの武器が
大量にたてかけられていた。
(どうやら、ここは武器庫みたいだな。)
飛ばされた場所が武器庫というのは運がいいのかもしれない。
ルーファスはそう思い、自分でも扱えそうな比較的軽そうな剣を手に取った。
しかし、違和感を感じる。
(軽すぎる・・・。)
いくら軽そうな剣を選んだからといっても、これは異常だ。
ふとある可能性に思い当たり、剣を壁に思い切り叩きつけてみる。
バキィッ!
剣は乾いた音を立て、あっさり折れてしまった。
(やっぱり、レプリカか・・・。)
どうやら、簡単に武器をくれるほど甘くはないようだ。
武器が手に入ったという喜びを裏切られて少し落胆したが、自分の傍に
デイパックが落ちていることに気づいた。
さっそく手に取って、中身を確かめてみる。
そして、剣が出てきたのを見てルーファスは安堵した。
先ほど期待を裏切られた分、喜びもひとしおだ。
剣は刀身が透き通っていて、冷気を発している。
ただの剣ではないらしい。
(魔剣か何かかな・・・?)
姉の友人のクリステルならもっと詳しいことが分かるのかもしれないが、
こういった魔力を持つ武器や道具に明るくないルーファスにはそれ以上の
ことは分からなかった。
(とにかく、これで自衛くらいはできるな。)
そして、他に何か役立ちそうなものがないか調べてみる。
出てきたのは皮製の袋に包まれた肉だった。
(食料か・・・。)
肉ならパンよりは精がつくかもしれない。
しかし、何となくこの肉からは嫌な感じがする。
できることなら、あまり食べたくないとルーファスは思った。
他にも何か無いか調べてみたが、冷気を発する剣とこの肉以外は、あの男の言っていた
通常の支給品だけのようだった。
「まあ、武器が手に入ったんだから贅沢は言えないか・・・。」
そう言って、納得するルーファス。
次に知り合いがいないか名簿を確かめてみた。
「アーシャさん!?姉さんに、クリスさんまで・・・!?」
まさか姉たちがいるとは思っていなかったルーファスは驚愕する。
だが、これは嬉しい誤算だ。
あの3人がいるなら、この状況も何とかなるかもしれない。
彼女たちなら、こんな殺し合いなどに屈せずに必ずあの男に立ち向かうはずだ。
そして、必ずあの男の非道な企みを打ち砕いてくれるに違いない。
やることは決まった。まずは彼女たちと合流しよう。
方針を決めたルーファスは武器庫から出ることにした。
しかし、デイパックを背負ったと同時に、出入り口の扉のノブが回った。
誰か来たのだ。
「!」
慌ててドアから離れ、冷気の剣を構えるルーファス。
そんなルーファスを無視するように、ガチャっと音を立てて扉が開く。
まゆこは気がつくと森の前に立っていた。
周りを見回すと、デイパックが落ちていた。
それを見て、薄暗い部屋での男の言葉を思い出す。
殺し合いをしてもらうという言葉を。
その言葉を思い出したまゆこは、同時に首を吹き飛ばされた少女の姿を思い出し、
人が死んだということに恐怖を感じ、反射的に口元を抑えた。
「なんで、あの男の人は殺し合いなんてひどいことをさせるのかな・・・?」
まゆこには、あの男の考えていることが分からなかった。
まゆこは困っている人を放っておけないような優しい性格の持ち主である。
そんなまゆこには、殺し合いなんて馬鹿げたことを考える人間が存在することが悲しかった。
「こんなの間違ってるよ・・・あの男の人を止めないと・・・!」
平和を守るために魔法少女となって魔物たちと戦う道を選んだまゆこは、この殺し合いと
いう狂気のフィールドで、殺し合いを阻止するという決意を固めた。
そうして方針を決めたはいいが、今の自分には変身するためのマジカルステッキがない。
あれがなければ自分はただの子供と変わらない、まずはステッキを探す必要がある。
まゆこは、さっそく落ちているデイパックの中身を確認することにした。
ひょっとしたら、この中に自分のステッキがあるかもしれないからだ。
そして、最初に出てきたのは盾だった。
身を守るために役立つかもしれないが、まゆこの腕力では満足に扱えないだろう。
そう判断したまゆこはひとまず盾をしまう。
次に出てきたのは、2丁拳銃が彫られた写真入りのロケットだった。
手に持って祈ってみたり、ぶんぶん振り回してみたりしたが、何にも起こらないので
これは外れアイテムなのだろうと判断して、これもデイパックにしまう。
最後に出てきたのは綺麗な冠だった。
まゆこはとりあえず頭に冠ってみた。
(なんか、お姫様になった気分・・・。)
ふと、状況にそぐわないお気楽な思いを抱くまゆこ。
そんな自分がなんとなく恥ずかしくなって、誰もいないのだが誤魔化すように
照れ笑いを浮かべてしまう。
デイパックに入っていたアイテムはこれで全部のようだった。
自分のステッキが無かったことに若干の落胆を感じたが、元からそれほど期待は
してなかったのだ。
次に、参加者名簿を確認してみる。どうやら知り合いはいないようだ。
それについては少し心細かったが、同時に安心もした。
こんな場所に自分の知り合いなどいてほしくはない。
名簿を確認し終えたまゆこは、デイパックを背負って立ち上がる。
まずは信頼できる人を探そう。
そう思って、まゆこは歩き出した。
だが、その歩みはすぐに止められた。
なぜなら、彼女に向かって物凄い勢いで何かが飛んでくるのが見えたから。
|