鬱蒼とした森の中、明るく元気な声が高らかに響く。
「イ〜ザす〜す〜め〜や〜・・何だっけ?・・・まっいっか♪」
彼は手に持ったツルハシを指揮棒のようにブンブン振り回しながら陽気に歌を歌う。
「あした〜を〜かたれ〜ず〜・・・んー♪今日はすこぶる喉の調子が良いぜっ!」
彼は歌い続ける。
キーが外れてようが、古い曲だろうが、アニメソングだろうが、うろ覚えだろうが、知っている曲を片っ端から歌う。
彼の歌声は暗く薄気味悪い森の中を、明るく暖かい色に染めていった。
「ほ〜し〜ぞら〜の〜し〜た〜の〜ディー・・・あっ!!」
突然、彼の歌声が止まる。
今まで以上に勢いよく振り回したツルハシが手元を離れ、宙に舞ったからだった。
ツルハシは彼自身でも想像していなかったぐらいの速度で森の奥深くへと飛んでいく。
「うわっ!やっべぇー!!待ってくれぇー!ツルハシやーい!」
オンボロとは言えあのツルハシは立派な凶器である。
鉄製の尖っている部分がもし誰かに当たったら、きっと大怪我をしてしまうだろう。
(もし誰かに当たっちまったら・・・土下座じゃすまねぇ〜よぉ〜・・・!!)
彼は少し涙目になりながら必死に追いかける。
全力で走っているのにも関わらず、足場が悪いせいかツルハシとの距離はどんどん離れ遂には見失ってしまった。
(うわぁ〜ん・・・何とかしてくれぇ〜・・・冥夜ぁ〜!)
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