桜 奮闘記

 

桜は相変わらず伊予那を探して、ハンマー片手に森の中を歩いていた。

そして、東へと歩みを進めている途中で木造の校舎を発見した。

桜は一瞬だけ、その校舎に伊予那がいるのでは、と期待したが、
こんないかにも幽霊が出そうな古びた校舎に、あの怖がりな伊予那がいるわけがないと思い直す。

(時間が惜しいし、ここは無視して次に行くか。)

校舎の探索は時間の無駄と判断し、桜は先を急ぐことにした。

ちなみに、このとき校舎の中には涼子と伊織の二人がいたので、桜が校舎の中に呼びかけていれば、
二人は桜の存在に気が付いたはずだ。
もし桜がいたことに涼子が気づいていたなら、彼女は伊織を桜に押し付けただろう。
そして、その場合は伊織は死なずに済んだのかもしれなかった。

だが、もちろん桜にはそんなことは分からない。

桜が考えるのは、伊予那のことのみ。

早く伊予那を探し出してやるために、桜は校舎を後にしてさらに森を西へと進み続ける。




数十分ほど東へと森を歩き続けた桜は、近くでかすかに人の声が聞こえたような気がした。

(もしかして、伊予那…!?)

急いで声の聞こえたほうへと向かう桜。
そして、数分ほど走り続けた桜はようやく木々の向こうに人影を見つけた。

(伊予那…!)

期待が膨らみ、人影の姿を確認しようと近づく。

だが期待は裏切られ、そこにいたのはグレーの服を着た少年と鎧を着たでかいトカゲだった。
少年は辺りを見回していて、トカゲはのん気にも寝ているようだ。
伊予那では無い事に桜はがっかりする。

(…いや、でもこいつらが伊予那の居場所を知っているかも…。)

そう思いつつも、その望みは薄いだろうと桜は考える。
それに少年のほうはともかく、トカゲのほうはどう見ても化け物だ。

桜も廃病院の事件でスライムやら自分に憑依してきた幽霊やらを知っているため、
トカゲの姿に驚きはするが、人外の存在自体は受け入れることができる。

だが、だからこそ彼らが友好的な態度で接してくるとは限らないことを知っている。
むしろ、害意を持ってこちらに襲い掛かってくる可能性のほうが高いだろうと桜は考えていた。

(…でも、こいつらコンビ組んでるみたいだし…いきなり襲ってきたりはしないかな?)

桜は少年がトカゲと一緒にいることから、このトカゲは少なくともいきなり襲い掛かって
くるような存在ではないのだろうと推測する。

何より、やっと自分以外の参加者に出会うことができたのだ。
伊予那の居場所でなくても、何か伊予那を探す上で役に立つものをこの二人がもたらしてくれる
かもしれない。

そう考え、桜はこの二人に話しかけることにした。


しかし、ここで二人の様子がおかしいことに桜は気がついた。


辺りを見回している少年は何かを警戒しているようで、その視線は鋭かった。
その頬には冷や汗が流れており、彼が緊張しているのがここからでもよく分かった。
トカゲのほうはよく見るとウロコが焼け焦げていて、どうやら寝ていたのではなく
怪我をして気絶していたらしいことが見て取れた。

(そうか…こいつら、誰かに襲われたんだ…。)

桜はそう思い、しかしすぐに疑問を抱く。
襲われた後というなら、少年が怪我をしたトカゲを治療もせずに辺りを警戒している理由が
分からない。

だが、その疑問はすぐに頭の隅に追いやられた。
なぜなら、トカゲの額に見覚えのある札が貼り付いているのを見つけたからだ。

「…伊予那のお札?」

思わず声に出してしまった桜。

「そこかっ!」

ドゴオォォン!

それを後悔するヒマさえ与えられず、桜は自分に向かって放たれた光弾に吹っ飛ばされた。




リョナたろうは硬直した状況に苛立っていた。

さっさと襲撃者を倒してここから離れなければ、先ほどの爆発と自分の声を
聞いた参加者がここへ集まってくるかもしれないというのに、襲撃者はトカゲに
攻撃を加えた後は沈黙を保っている。

(来るなら早く来い…!そっちだって、人が集まってきたら面白くないはずだろうが…!)

襲撃者の不気味な沈黙。
その意図が理解できず、リョナたろうの神経をさらにすり減らす。

(くそっ…もう、かなり時間が…!)

このままでは、騒動を聞きつけた参加者が駆けつけてしまう。
集まってきた参加者が友好的なら問題はない。
だが、もしそいつが殺し合いに乗っており、自分に襲い掛かってきた場合。

そんな状況になったら、かなりヤバイ。

そいつに対処しようとするスキを突かれて、
トカゲを攻撃した襲撃者に先ほどの爆破の力を使われてしまったら…。

(怪我じゃすまねーかもな…。)

相手の爆破の力を受けたトカゲは一発で戦闘不能になってしまった。
ただの人間である自分がそれを喰らったなら、下手をすれば死ぬかもしれない。

(…ちっ…開始早々、面倒なことに…!
 …それにしても、いい加減に姿を見せやがれ…!)

そのとき、リョナたろうの耳がかすかな声を捉える。

「そこかっ!」

リョナたろうは声の聞こえた方向に向かって、魔弾を放った。

ドゴオォォン!

どうやら魔弾は相手に命中したらしく、身体を宙に浮かせて吹っ飛ぶ少女の姿が確認できた。

だが、少女が地面にぶつかる直前に受身を取ったのを見て、リョナたろうは舌打ちをする。

(浅い…!)

おそらく、少女は魔弾が直撃する寸前に持っている武器を盾にしてダメージを抑えたのだろう。
体勢を立て直した少女の目は怒りに満ちていた。




吹っ飛ばされた桜は身を捻って受身を取り、地面に叩きつけられる際の衝撃を最小限に抑えていた。
そして、そのまま吹っ飛ばされた勢いを利用して身体を転がしながら体勢を整える。

(あの野郎、いきなり攻撃してきやがって…!
 …っていうか何だよ、さっきのドラゴン○−ルみたいな技は!?)

桜は少年の放った光弾に度肝を抜かれていた。

(…そういえば、あの男も変な力を使ってたっけ。)

ふと、キング・リョーナも何らかの力で向かってきた参加者たちを床に叩きつけていたことを思い出す。

(伊予那も霊感とか持ってるし、こんな力を使うやつがここにはたくさんいるのかも…。)

ともあれ、考えるのは後回しだ。
今はいきなり攻撃してきたこの少年を倒さなければいけない。

こいつは殺し合いに乗っている。
そんな輩を放っておくわけにはいかない。

桜の中では、すでにこの少年が先ほど辺りを警戒していたことについての疑問は
きれいさっぱり吹き飛んでいた。

(コイツは危険だ。伊予那のためにも、ここで倒さないと!)

桜は伊予那を守るという使命感を身体全体に漲らせて、ハンマーを手に少年へと向かっていった。




(…よく見るとこいつのハンマー、モヒカンのじゃねーか。)

リョナたろうは少女の持っている武器が、自分の仲間であるモヒカンのものだとようやく気づく。

あのハンマーはモヒカンに合わせてあるので、かなりの重量である。
腕力には自身のあるリョナたろうでも、まともに扱えないくらいなのだから相当なもののはずだ。

だが、少女はそのハンマーを危なげなく構えている。

「………。」

何となく男としてのプライドを傷つけられたような気がして、リョナたろうは少し悲しくなる。

(…いや、今はそんなことはどうでもいい。)

目の前のこの少女は爆破の力を使って、自分たちをいきなり攻撃してきた。
つまり、この少女は殺し合いに乗っているのだ。

ならば、殺さねばならない。
殺し合いに乗っている輩など主催者打倒には邪魔なだけだし、自分が痛めつけるべき女も
この少女が殺してしまうかもしれないのだから。

そこまで考えて、リョナたろうは少女を一瞥してニヤリと笑う。

(それに、こいつもなかなかの上玉だしな。)

リョナたろうは襲撃者が予想外の美少女であることに喜んでいた。

自分が勝てばこの少女を思うがままに嬲れるのだ。
殺し合いに乗った者なのだから、大義名分も立つ。

もちろん油断はできないが、勝った後のことを考えると心が躍るのは抑えられない。

(おk、俄然やる気が出てきたぜ!)

リョナたろうは歪んだ欲望を身体全体に漲らせて、少女に向かっていった。


 

桜とリョナたろうは、ほぼ同時に相手に対して向かっていく。

その速度はほぼ互角。
超重量のハンマーを持っているにもかかわらず、自分とほとんど同じ速度で
向かってくる桜に目を剥くリョナたろう。

(身体能力はこのガキのほうが上か…!)

だが、だからといって負けるつもりはない。
リョナたろうとて、いくつもの死闘を潜り抜けてきた猛者である。
こんな自分より年下であろう少女に負けるなど、プライドが許さない。

リョナたろうは魔弾を放ち、桜にけん制をかけるが、
桜は魔弾をハンマーでリョナたろうに打ち返した。

慌てて、身を低くして返された魔弾を避けるリョナたろう。

そのスキを突いて、桜がハンマーを振りかぶってくる。

リョナたろうはそれを避けるのは無理と判断、咄嗟に身を捻って
背中のデイパックを盾にし、衝撃を緩和。

しかし、それでも鈍い痛みに呻き声が漏れる。
さらに背中で受けたために体勢が崩れ上体が傾くが、
リョナたろうは殴られた勢いを利用してそのまま前転、追撃を避ける。

すぐに振り向くが、目の前には迫る桜。
リョナたろうに向かって振りかぶられたハンマー。

だが、リョナたろうはハンマーに魔弾をぶち当てて桜の攻撃のタイミングを狂わせた。
魔弾がハンマーに叩きつけられた衝撃で、桜は身体を仰け反らせてしまう。

ドゴォッ!

そのがら空きになった腹にリョナたろうは容赦無しに
ボディブローを叩き込んだ。

「がぁっ…!」

桜の呻き。
みぞおちを強打され、呼吸困難に陥る桜。

「オォォォラァァッ!!」

そんな桜に襲い掛かる、リョナたろうの拳による連打。
桜の顔、胸、腹、どこであろうと容赦無く拳を叩き込んでいく。

「ぐっ!?がっ…ぐふぉっ!?があぁぁぅぅっ…!」

桜は殴られるたびに苦鳴を漏らす。
自身の身体に拳が埋まるたびに痛みと骨の軋む音が響き、衝撃で意識が飛びそうになる。

「ぐっ…!うぁっ!がふっ…あぐぅっ!」

なす術もなくボコられる桜。

リョナたろうの顔に笑みが浮かぶ。
それは少女の身体に拳を叩き込む快感から自然と浮かんだものだった。

しかし桜はその笑みを嘲笑と見て、殴られながらも瞳に怒りを宿して
リョナたろうを睨み付ける。

(…調子に乗るな、この野郎!)

桜はリョナたろうが油断して攻撃を緩めたスキにハンマーを手放して、
リョナたろうの腕を捕まえる。

桜の突然の反撃に、リョナたろうは驚愕する。

(このガキ、あれだけ殴られて…!?)

桜のタフさに驚くリョナたろう、そんな彼を桜は気合を込めて、

「ウオオォォリャアァァァーーーーッ!!」

近くの木に向かって、思い切り投げ飛ばした。

鈍い音を立てて、木に激突するリョナたろう。

「ガハッ…!」

背中から木に叩きつけられた衝撃に息が詰まる。
だが、痛みに呻いているヒマはない。
顔を上げたリョナたろうの目には、再びハンマーを手にして迫る桜の姿。

「トドメだぁぁぁーーーーっ!!」
「くっ!?」

リョナたろうは何とか攻撃を避けようと上体を逸らして身をかわす。
それが功をなしたか、桜が振り下ろしたハンマーはリョナたろうを外れて、
リョナたろうの背後の木に激突した。

舌打ちをする桜。
リョナたろうは急いで桜から距離を取って離れる。
桜も間合いを開けて、体勢を整える。

両者が再び構えて、仕切りなおしとなったところで…。

ドシィィィィーーーーーーン!!

何かが倒れたような大きな音が辺りに響き渡った。
リョナたろうと桜は何が起こったのかと、音がした方向を向く。

「は……?」

リョナたろうはその光景に思わず呆けた声を上げてしまった。
なんと、先ほどハンマーが激突した木が真っ二つに折れて倒れていたのだ。

リョナたろうはそれが示す意味を理解すると同時に、驚愕の表情で桜のほうを向く。

本人も驚いているのか、口をアングリと開けて倒れた木のほうを見ている。
桜はリョナたろうの視線に気づくと少し慌てて、

「い…いや、これは私がそこまで馬鹿力ってわけじゃなくて!
 ほら、このハンマーだってかなり重いしさ!この木も中がスカスカだったり、
 腐ってたりしたんだよ、きっと!」

言い訳のようにまくし立てる。

「…いや、なんも聞いてねーけど…。」

半眼で答えるリョナたろう。
だが、すぐに表情を引き締める。

爆破の能力を持ち、武器のハンデはあれど自分と互角に渡り合う力を持つ少女。
だが、ここまでの闘いでリョナたろうは桜を殺さないように戦っていた。

もちろんそれは良心でも何でもなく、後でじっくりと桜を痛めつけて楽しむためだ。
どこかヌルイ雰囲気を漂わせ、明らかに命のやり取りに慣れていない少女を
リョナたろうは侮っていたのだ。

だが、今の光景を見て、認識を改めた。

確かにこの少女はヌルイ。
はっきり言って、戦闘能力が高いだけの素人だ。
闘いに対する覚悟や経験では、リゼにすら遠く及ばないだろう。

だが、しかし。

この少女を見くびると、思いも寄らない痛い目に合わされるかもしれない。
この少女の相手をするには、半端な態度では危険だとリョナたろうは考え直した。

(…殺す。)

お楽しみは次の相手までお預けだ。
手加減無しに、本気で相手の息の根を止めにいく。

目の前の相手を獲物としてではなく、敵として。
倒すべき相手として、見据える。

そうして、リョナたろうは桜へ向かって一歩踏み出し、


突然、横から加えられた衝撃に吹っ飛ばされた。


 

自分と対峙していた少年が、いきなり現れた半透明の鞭のようなものに殴られて吹っ飛ばされる。
少年は勢いよく吹っ飛んでいき、近くに埋まっていた岩に頭を打ち付け、そのまま気を失った。

「なっ…!?」

いったい何が起こったのか?

桜は、半透明の触手がどこから伸びてきたのかを確かめる。

「!…あれは…!?」

自分から10メートルほど離れた木の枝。

その上にいたのは、見覚えのあるゲル状の生き物。
いつかの廃病院で自分と伊予那を襲ってきたスライム。

(でも、弘治さんは成仏したはずじゃ…。)

あの廃病院で出会った弘治という名のスライムの形を取った幽霊。
彼はあのとき、確かに成仏したはずだった。

桜は疑問に思うが、すぐにあることに思い当たる。

(そうか…!こいつも弘治さんと同じで、誰かの怨みが形になったものなんだ…!)

姿が同じなのは、たまたま怨みの質が弘治と同じようなものだったのだろうと桜は推測する。

満月の夜でもないのに実体化しているのは疑問が残るが、あのキング・リョーナとかいう男の
仕業だろうと桜は単純に考え、今は目の前のスライムの対処に集中することにする。

(どうする…?こいつ相手には普通の攻撃は……あっ!)

ここで、桜は思い出す。
あのトカゲの額に貼り付けられていた伊予那の札を。

(あのお札があれば…!)

トカゲのほうを見ると、まだ気絶している。
その額には、伊予那の持っていた赤い札。

その札を手に入れるために、トカゲに向かって走る桜。

だが、スライムはそんな桜の行動を許さない。

「うっ…!?」

スライムの伸ばしてきた四本の触手が桜に襲いかかる。

桜は向かってくる触手のうち、二本を避け、一本をハンマーでなぎ払ったが、
最後の一本に足を絡め取られ、転倒してしまった。

そして、転倒した桜に先ほどあしらった三本の触手が襲い掛かる。

一本目は桜の首を締め上げ、二本目はハンマーを持つ右腕をねじり上げる。
残る三本目は、桜の口に強引にねじ込まれた。

「んんぅぅっ…!ぐぅぅっ…んぐぅっ…!」

ズッ…!ズブッ…グジュッ…!ズッ…ジュブ…!

口の中を喉の奥まで蹂躙するスライムの触手。
首を絞められながら口を触手に犯され、桜は呼吸ができない苦しさに暴れる。
そして、唐突に桜の口の中の触手が先端からドロドロしたものを桜の口内に注ぎ込んだ。

「んぐぅっ!?」

桜はいきなり口内に注ぎ込まれたそれを飲み込んでしまう。
飲んでしまった後、その味のあまりの酷さに吐き気を催した。
吐き出そうとしたが、触手に口内を陵辱されている状態ではそれは叶わない。

そんな桜にスライムはさらに二本の触手を伸ばし、一本は桜のノースリーブの中に、
もう一本は桜のハーフパンツの中に入り込み、桜の柔肌をこねくり回す。

「んんぅぅーーーっ!んんーーーっ!!」

桜はその感触に顔を顰め、触手を振りほどこうと必死に暴れる。
だが、触手はがっちりと桜の身体を拘束しており、桜はなす術もなく
触手に身体を弄ばれるしかなかった。

(ちくしょぉ…!こんな化け物に…!)

桜は悔しさに身体を震わせるが、どれだけ暴れても拘束は解けない。

何とか脱出の術を考えようとする桜に対して、触手は桜の胸を触手で包んで
強く吸い上げる。

「んんぅぅんっ!?」

与えられた刺激に身体をビクンと震わせる桜。

その反応に気を良くしたのか、今度はハーフパンツの中に進入していたもう一本の触手が
ショーツの中にまで潜り込み、桜の秘所と肛門を包み込み、グニュグニュと揉み上げる。

「んぐぅぅっ…!?んぐっ…ふぅぅっ!」

スライムの冷たい触手に大事なところを責められ、桜は強い嫌悪を抱くと同時に、
なぜかその責めに強い快感を感じてしまい、身を仰け反らせる。

(な…何だよ、これ…!?)

自分の身体の変化に戸惑いを覚える桜だったが、先ほど飲まされたドロドロの液体を思い出し、
あれのせいだと直感で理解する。

だが、分かったところでどうにもならない。

触手の責めは激しくなり、桜の口内の触手はさらに喉の奥まで進入してくる。
胸に吸い付いている触手もその吸付きを痛いほどに強めてきて、股間の触手も動きが激しくなっている。

そして、その責めは先ほどとは比べ物にならない快感を桜の身体に与えてくる。

「んっぐぅぅっ!?ふぅぅんんっ…!んうぅぅぅっ…!んんんぅぅーーーーっ!!」

桜の口から甘い声が漏れ、桜の意思とは裏腹に身体をくねらせてしまう。
それを何とか阻止しようとするが、まるで他人の身体であるかのように
自分の身体は言うことを聞いてくれない。

(くそっ…!放せ…このっ…このぉっ…!)

「んっ…んんっ!んんぅぅっ…!」

顔を真っ赤にして目に涙を浮かべながら、声にならない声をあげる。
与えられる快感があまりに強すぎて、すでに桜はまともに頭が働かなくなっていた。
これでは、この状況から脱出するための策を考え付くことなど不可能である。

もはや、このままスライムの慰み者になるしか桜に道は残されていないかに思われた。


だが、ここで桜にとって救世主が現れた。


「熱烈歓迎!(いただきマンモスー!)」


そう、気絶していたトカゲである。
彼はつい先ほど意識を取り戻したのだ。

目を覚ました彼の目に映るのは、スライムに責められて身を捩じらせ悶える少女の姿。

彼の性欲は一瞬でヒートアップ、アクセル全開で桜へと突っ込んでいった。

だが、スライムにとっては自分の楽しみを邪魔する者が現れた形になり、面白いわけが無い。
スライムは邪魔者を排除するべく、触手を鞭のようにしならせて向かってくるトカゲを攻撃した。

だが、トカゲは俊敏な動きでそれらを避け、背後から迫る触手も尻尾で叩き落して突き進む。

スライムの動きに初めて焦りが見えた。
このままでは、せっかくの獲物を奪い取られてしまう。

そして、そのスライムの焦りに付け込んだ者がいた。

もちろん、拘束されている桜である。
彼女は自分への責めが弱まったのを見て取ると、あの責めの中に置いても手放さなかったハンマーを
思い切りスライムに叩き付けた。

その衝撃に、さすがに怯むスライム。

そのスキに桜は触手を振り払って何とか拘束から逃れるが、地に足を付けた途端、先ほどの責めの余韻が
快感として全身を駆け抜ける。
それに耐え切れず、桜は呻いて膝を突く。

そんな桜に再び迫る触手。

だが、桜に迫るのは触手だけではない。

ご存知、我らがトカゲ君である。
彼は目をハートにして、桜に思い切り飛びついたのだ。

それは偶然にも迫る触手から桜を守る形となり、桜を捕らえるはずだった触手は
トカゲをぐるぐる巻きにして彼を拘束する。

突然の事態にギャーギャーと喚いて暴れるトカゲ。
スライムは予想外の事態に苛立った様子を見せつつ、トカゲをポーンとはるか遠くへ投げ捨てた。
悲鳴を上げながらトカゲは飛んでいき、これまた偶然にも先ほどのリョナたろうと同じように
たまたま落下地点に埋まっていた岩に頭から落ちて、脳震盪で気絶した。

スライムはようやく邪魔者が消えたとばかりに、桜に意識を向ける。

だが、スライムが見たのはハンマーを自分に振り下ろす桜の姿。
そのハンマーには、トカゲの額から剥がれたお札が貼り付けられていた。

「必殺・オフダーハンマァァァーーーー!!」

桜の一撃は見事にスライムに命中し、スライムの身体を盛大に凹ませた。

だが、桜の予想とは裏腹にお札は効果を発揮されない。
その事実に、桜は焦る。

スライムは桜の動揺を見て取って、そのスキに桜に触手を伸ばそうとして…


次の瞬間、スライムは炎に包まれた。


炎に包まれたスライムは慌てて、その場から逃げ出していった。


 

スライムが逃げ去った後、この場で立っているのは桜だけとなった。

「そっか…霊体に効果があるのは青い札だったっけ…。」

青い札は霊体を蒸発させる力を持ち、赤い札は対象を燃え上がらせる力を持つ。
燃え上がったスライムを見たことで、桜はようやくその事実を思い出していた。

「まっ、追い払うことには成功したんだし、結果オーライってやつだよね。」

桜はそう言って、ニッと笑う。
次いで、気絶している二人に目を向ける。

グレーの服の少年と鎧を着たトカゲ。

少年のほうは自分に襲い掛かった危険人物だ。
妙な力も使うし、殺し合いにも乗っているようなので
ここで殺しておいたほうが無難だろう。

だが、それに桜は抵抗を覚える。

(戦っている最中ならともかく…気絶しているところを、ていうのもなんかなー。)

そもそも、桜はケンカが強くて運動神経が異常に良いだけの14歳の少女なのだ。
当然、人を殺した経験などないし、できる限りそんなことはしたくない。

(…それにトカゲのほうは私を助けてくれたんだよなー。)

そう思い、トカゲに目を向ける桜。

桜はこのトカゲがスライムの攻撃から自分を守ってくれた(桜からはそう見えた)ことから、
このトカゲは殺し合いに乗っておらず、さらに自らを犠牲にしてでも人を助けるような
優しい心を持っていると認識していた。

だからこそ、桜は疑問を抱く。

なぜ、このトカゲは殺し合いに乗った少年と一緒にいたのか?
少年は怪我をして気絶したトカゲを庇うように傍で見張りをしていた。
ならば、仲間であろうことは疑うべくもない。

少年がトカゲを騙していた?
なるほど、一番納得のいく答えだ。

だが、この優しいトカゲが殺し合いのパートナーとして役に立つだろうか?
むしろ、このトカゲは殺し合いに乗った少年にとっては一緒に行動する上で
邪魔にしかならない気がするのだが…。

「…あーもー!分っかんねー!どういう関係なんだよ、こいつら!?」

桜は苛立たしげに頭を掻き毟る。

「もういいや、こいつらのことは。とりあえずトカゲだけ起こしてやって、
 その後すぐに伊予那を探しに行こう。」

桜はそう結論付けて、気絶したトカゲに歩み寄って、トカゲの肩を揺する。
トカゲはすぐに目を覚まし、寝ぼけた顔で桜のほうを見る。

「よう、トカゲ。さっきはありがとな。
 んで、助けてもらっといて悪いけど、私は急いでるんで先に行くよ。
 あんたも危ないヤツには気をつけなよ。」

桜はトカゲにそう告げた後、デイパックを拾ってスタコラサッサと去っていった。

トカゲはそんな桜を見送った後、再び寝転がってグースカとイビキを立てて寝始めたのだった。

どうやら今の彼は性欲より睡眠欲らしい。
傷ついた身体を癒すために、しばらく眠り続けるのだろう。


一方、トカゲにお礼を言ってその場を後にした桜。
彼女は一つミスを犯していた。

彼女の持っていったデイパック。
それは彼女のものではなく、今現在グースカ寝ているトカゲのものだった。
つまり、持っていくデイパックを間違えたのだ。

これが後にどういった結果をもたらすのかは分からない。

…だが、少なくとも桜がひもじい思いをする確率が大幅に上がったのは確かであろう。






【C-3:X2Y4/森/1日目:午前】

【美空桜@一日巫女】
[状態]:ダメージ中、疲労中、媚薬の効果が若干残っている
[装備]:モヒカンハンマー@リョナラークエスト
[道具]:デイパック、支給品一式(食料無し)
ファイト一発*2@リョナラークエスト
[基本]:伊予那を探す・助ける・協力する(伊予那に害をなす奴を倒す)
[思考・状況]
1.伊予那を探す

※サーディの顔は脳裏に焼きつきました。出会えば「夢」の人物だと分かるでしょう。
※リョナたろうをマーダーと認識しました。
※リザードマンを殺し合いに乗っていない優しいトカゲと認識しました。
※特殊な能力を持つ参加者の存在を知りました。



【C-3:X1Y4/森/1日目:午前】

【リザードマン@ボーパルラビット】
[状態]:睡眠、ダメージ中、頭にたんこぶ、鱗が少し焦げている
[装備]:リザードマンの鎧@ボーパルラビット
[道具]:デイパック、支給品一式
首輪探知機@バトロワ(未使用)
[基本]:本能のままに
[思考・状況]
1.リョナたろうと共に行動
2. 生存本能によって賢さブースト中
3. 愛嬌を振りまいて仲間を作る
4. 女の子を襲う


【リョナたろう@リョナラークエスト】
[状態]:気絶、ダメージ小、頭にたんこぶ
[装備]:拡声器@バトロワ
リョナたろうの鎖帷子@リョナラークエスト
[道具]:デイパック、支給品一式
弓@ボーパルラビット、聖天の矢×20@○○少女
赤い札×9@一日巫女
[基本]:主催者を倒す+女の子を襲う
[思考・状況]
1.襲撃者を警戒
2.リザードマンと共に行動
3.オーガ、モヒカン、リゼを探す
4. 主催者を倒すための仲間集めを考える
5. 女の子を襲う

※リョナたろうの使える魔法は「サーチ」です。
※必殺は「魔弾の力」です。
※桜を爆破の能力、もしくは道具を持つマーダーと認識しました。



【C-3:X1Y3/湖/1日目:午前】

【スライム@一日巫女】
[状態]:ダメージ中、中度の火傷(再生中)
[装備]:なし(出来ない)
[道具]:なし(持てない)
[基本]:目の前の敵に襲い掛かる
[思考・状況]
1.敵を見つけ次第攻撃

※基本的に木の枝をつたって攻撃するようです。
※自己再生能力を持っていますがコアをやられると
 おしまいというステレオタイプなスライムです。
※火は湖の水で消火しました。


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