血の宿命


「・・・・・・ん・・・いい・・・匂い・・・。」

微睡み【まどろみ】の薄明かりの中、鼻腔をくすぐる芳しい匂い。
その匂いに誘われて、私の意識と思考がゆっくりと動き出していく。

「・・・んっ、ふにゃぁぁ〜〜・・・。」

少し重い上半身を起こしながら、大きな欠伸を1つ。
寝惚け眼【ねぼけまなこ】を擦り、私は周りを見渡し匂いの発生源を探った。

「・・・わぁ〜・・・きれい・・・。」

私の周りには、色取り取りの奇麗な花が咲き乱れていた。
私はその、ふかふかの絨毯【じゅうたん】のような花畑の真ん中で眠っていたことになる。

「・・・って・・・あれ・・・?」

その時、何か大きな違和感が私の頭の中で生まれる。
私は確かにど忘れをすることもあるが、昨日眠りについた場所ぐらいは忘れたりしない。
私が覚えている限り、昨日眠りについた場所は此処ではない。
というより、そもそも・・・。

「・・・そうだ、私っ!」

私の脳内に、今日目が覚めてからの光景が再生される。
目が覚めると、ヤケに周りがざわめいていて薄暗かった。
私が飛び起き周囲を警戒しようとした時だった。
あいつ、キング・リョーナが一筋の光の下に現れたのだ。
あいつは確か・・・。

「・・・こんな酷いこと、やめさせないとっ!!」

私の記憶がどんどん鮮明になっていく。
あいつは自分の楽しみのために、私や沢山の人を集めて殺し合いをさせようとしている。
自らこんな酷いことを主催したことを名乗るのだから、相当な自信があるのだろう。

(貴方の思い通りになんて、させないんだからっ!)

私は勢いをつけて立ち上がると周りを見渡す。
すると、地面にバッグが1つ落ちているのが目に入った。

(あいつの言ってた、デイパックってヤツかな・・・。期待はしてないけど、とりあえず中身を確認してみよう・・・。)

私はデイパックの傍まで歩み寄りしゃがむ。
そして、デイパックの中に手を突っ込んでみた。
少し手を泳がしてみると、丸い布袋のような物が1つ手に触れる。

「――!!」

その瞬間、私は凍りついた。
その袋を触った時、小さかったけれども、とても甲高くて【かんだかくて】心地良い音が聞えたからだ。
私は反射的にデイパックからそれを取り出し正体を確認する。

(す・・・鈴だ・・・!?)

袋の口を閉める紐に、小さくて可愛い金色の鈴が2つついていた。
鈴はリンリンと心地良い音を立てて私を誘う。

「――!?%!$!”*!$!?」

私が鈴の音に気をとられていた時だった。
その袋から、とても甘く美味しそうな匂いが漂ってきたのだ。

(・・・し、しまった!! ・・・これは・・・また・・・たび・・・!!)

私は咄嗟【とっさ】に布袋を放り棄てる。
地面に転がった布袋は鈴の音を鳴らし私を誘う。

(ダメッ! ダメだよ私っ!! い、今はあんなものに・・・夢中になってる時じゃあ・・・!!)

私はつい、布袋を掴んでいた右手に視線を落としてしまう。
私の右手には、微かにあの布袋の匂いがうつっていた。
私は衝動に駆られ、右手を舐めようと口元に近付ける。

「・・・ふぅぅ〜・・・ふぅぅ〜・・・!!」
(だ・・・だめ・・・負け・・・ちゃ・・・だめ・・・だから・・・!!)

口元まであと僅かといった所で、私は左手で右手を掴み衝動を抑え込む。
しかし、鼻元に迫った甘い誘惑は私の思考をどんどん焼き焦がし、身体を火照らせていく。

「!?!!」

ほんの僅かに風が吹いた刹那、あの鈴の音が小さく鳴った。
その音は本当に小さくて、普段の私なら聞き漏らしていただろう。
しかし、不幸にもその時の私は聞き漏らすことができなかった。

「ふぅ・・・ぅ・・・にぁ・・・ぁぁっ・・・ぅ・・・!!」
(ダメ・・・だよ・・・私っ!! 見ちゃ・・・ダメだっ!! ダメ・・・だって・・・っ!!)

私は必死に目を閉じ首を背けようとする。
しかし、身体は意に反して視線をあの布袋へと移そうとしていた。
ゆっくり、しかし確実に私の視界にあの布袋が映り込んでくる。

「――っ!!」

布袋が完全に視界に入った瞬間、身体の芯が燃え上がるように熱くなるのを感じた。
その全てを焼き尽くさんがばかりの熱気に、遂に私の思考は焼き切れてしまった。

「にゃぁぁあああああぁぁあぁぁああああんっ!!」

私は布袋に飛びつくと、顔に押し付ける。
リンリンと鈴が鳴り響き、それがまた私の身体を燃え上がらせていく。

(ごめん・・・私・・・もう何も・・・考えられないや・・・・・・。)

【B−2:X4Y4/花畑/1日目:朝】

【ナビィ@リョナマナ】
[状態]:恍惚
[装備]:マタタビの匂い袋(鈴付き)@現実世界
[道具]:デイパック、支給品一式
ブロードソード@アストラガロマンシー(本人は未確認)
ノートパソコン&充電用コンセント(電池残量3時間分程度、主電源オフ、OSはWin2kっぽい物)@現実世界(本人は未確認)
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.マタタビの匂い袋(鈴付き)のことで頭がいっぱい
2.キング・リョーナの行いをやめさせる

※マタタビの匂い袋にじゃれ付いてます、周りは全く見えてません、放っておくと1時間はずっとやってると思います

@後書き
ナビィ可愛いよナビィ!
・・・と、勢いだけで考えてやってしまいました。ごめんなさい。
でも、後悔はしてませんw
あと、【】はルビです。(´・ω・`;)

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