怒る女、怒る爺


「・・・まったく、あ奴め、面倒な所に出してくれたもんじゃ・・・っ!!」

ゴートは手に持った光を発する棒を前に向けながら悪態をついた。
キング・リョーナとの約束では、あの男と一緒にこのゲームを観戦しながら、集められた女どもを使い実験を続けるはずであった。
しかし、ゴートは今、暗く湿った洞窟の中を彷徨っていた。
参加者名簿を見ると、自分以外にも観戦をするという予定だった者の名前があった。
恐らくは奴らも同じ気持ちで彷徨っているだろう。

「このワシやロアニーを謀るとは・・・覚えておれっ!! キング・リョーナッ!!」

ゴートはあの男の謀りに気付けなかった自分が腹立たしくなり、思いきり壁を叩いた。
その時である。

「――ぬおっ!? なんじゃぁっ!?」

突然、凄い音が洞窟内に響き渡り、壁が揺れ動いた。
ゴートは倒壊の危険を感じ、思わず身を伏せる。
揺れが収まり、倒壊の危険がないことを確認したゴートは、ゆっくりと立ち上がり音の響いてきた方向へと進んだ。

「・・・コレは・・・なんじゃ?」

洞窟を暫く進んだゴートの目の前に飛び込んできた物、それは壁に少し減り込むように鎮座している巨大な物体であった。
定期的に低く小さな唸り声をあげる所から、見たことのない生物であると考えたゴートは身構える。

「詳しくは分からぬが、恐らくは人工生物じゃろう・・・。あ奴め・・・こんな物まで放ってくるとは・・・」
「・・・うーん・・・後、3分だけ・・・。」
「――っ!?」

〜〜〜〜

「・・・まったく、いつものことながら、よく寝るわね。門番。」

気持ちよく眠っていた私に、何処からかやってきた八蜘蛛が溜め息混じりに話しかけてくる。

「うーん・・・後、3分だけ・・・。そしたら・・・起きるよぉ・・・。」

私はゆっくり寝返りを打ち、八蜘蛛の気配に背を向けた。
その時、突然空気が抜けるような音がして、眩しい光が私の目に突き刺さった。

「眩しいっ。やめてよぉっ。後3分したら絶対起きるからぁー・・・っ。」

〜〜〜〜

(喋った・・・じゃと!?)

言葉の意味はよく分からないが、喋ることができる人工生物はそう多くない。
ゴートはキングの技術力の高さに戦慄し、同時に狂科学魔法使いとしての知的好奇心に駆られた。
ゴートは新種人工生物に小さな石を当てて、反応がないことを確かめると、ゆっくり近づき触れてみた。

(この硬さ・・・鉄の身体か。あ奴め・・・小僧のクセに、相当な技術力を持っているようじゃな・・・。)

ゴートが鉄の身体に感心しつつ、手探りを続けていた時である。

「――おわぁっ!?」

突然、空気が抜けるような音と供に、件の新種人工生物の胴体がばっくりと開いてしまった。
ゴートは反射的に飛び退き構える。
しかし、全く反応がないことを不審に思い、ばっくりと開いた内部に光を当ててみた。

「・・・お、女・・・!?」

内部には、淡い光を放つ文字や図形に囲まれ、一人の若い女が眠っていた。
ゴートはその寝息から、先の呻き声の正体が彼女であることを悟った。
彼女はゴートの当てる光に反応して身を捩る。

(あ奴の作ったホムンクルス・・・と言った所じゃろうな。差し詰め、この鉄の塊は、彼女専用の武器じゃろう・・・。)

そう考えた途端、ゴートの中にキングへの復讐心が沸いてくる。

(恐らく、ワシを屠るために放った刺客だったのじゃろう。しかし・・・どうしてか眠ってしまったと・・・!!)

ゴートの口元に自然と笑みが浮かび始める。

「ふっ・・・ふぇふぇふぇっ! ・・・ホムンクルスの女っ! 無能な主人を怨むのじゃなぁっ!!」

ゴートは光を避けるように身を捩った彼女の腕を掴み引いた。

「眩しいっ。やめてよぉっ。後3分したら絶対起きるからぁー・・・っ。」
「やかましいっ! さっさと降りるんじゃっ!」
「わぁっ!」

ゴートに無理矢理引き摺り降ろされ、彼女は頭から地面に倒れこんだ。
彼女は頭を左右に振りながらゆっくり上半身を起す。

「いたぁーい・・・。うぇーん・・・。」
「安心せいっ! すぐに痛くなくしてやるっ! ふぇふぇふぇふぇっ!!」
「眩しいっ!」

ゴートは寝惚け眼の彼女に光を当て、デイパックから矢を1本取り出す。

「眩しいよぉっ・・・! やめてよぉっ・・・!」
「ふぇふぇふぇっ、すぐに暗くしてやろうっ!」
「・・・・・・眩しいって・・・!」
「・・・・・・ふぇっ?」

ゴートは我が目を疑った。
今まで寝惚け眼で泣き言を言っていた彼女から、圧死させられそうなぐらいに激しい殺意の波動を感じたからだ。
ゴートがたじろいだ隙を彼女は見逃さなかった。
素早く立ち上がると、そのまま懐へと飛び込む。

「――しまっ!!」
「言ってるじゃないかぁぁぁぁぁっ!!」
「ぐぎゃぁっ!!」

彼女の勢いに乗った右拳がゴートの腹に突き刺さり、ゴートの身体を宙へと撥ね飛ばした。
それから彼女は高く飛び上がり、ゴートが宙で仰け反った所に合わせ、前方宙返りからの踵【かかと】落としを食らわす。
ゴートは激しく地面に叩きつけられ再び宙に撥ねた。
着地した彼女はすぐに地を蹴ってゴートの脇に回りこむと、ゴートの胸元に両手を合わせてありったけの力で振り下ろす。
再び地面に激突したゴートは、何度も咽ってどす黒い血を吐き出した。

「ごほっ! ごほっ! ・・・ぐえっ!」
「後、3分したら絶対起きるって! 言ってるじゃないかぁっ!!」

彼女はゴートの上に馬乗りになり、何度も拳を打ちつけた。

「うげっ! ・・・ぎゃぁっ! ・・・はごぁっ!!」
「なのにっ! どうしてっ! きみはっ! 私の邪魔をするんだっ!」

ゴートが動かなくなるまで殴り続けた彼女は、荒々しく息をしながらゴートから降りた。

「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・・・・ふわぁー・・・。」

彼女は大きく欠伸をして、周りを見回す。
真っ暗でよく見えない空間に、一箇所だけ椅子のような場所を発見した彼女は、ゆっくりと向かう。

「よっこいしょ・・・。」

椅子のような場所によじ登った彼女は、もう一度大きな欠伸をして、軽く身を捩った。

「この椅子・・・ちょっと硬い・・・でも・・・後で・・・いいや・・・zzZ」

彼女は再び、至福の世界へと旅立った・・・。

【B−1:X4Y3/洞窟内部/1日目:午前】

【ゴート@リョナマナ】
[状態]:気絶中、残魔力微量、全身打撲
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式(懐中電灯除く)
猫じゃらしx3@現実世界
大福x10@現実世界
弓矢(24本)@ボーパルラビット
[基本]:マーダー、キング・リョーナに復讐する
[思考・状況]
1.仲間のロアニーと合流する
2.キングへの報復方法を考える
3.ナビィ達を見つけたらキングの件とは別に報復する

※後1時間ぐらいは気絶しています
※取り出した矢、懐中電灯は手元にスイッチが入ったまま転がってます
※生存本能から、無意識の内にヒールIIを何度も唱えて門番の猛攻に耐えました
 高齢であることを考えると、魔力全快まで半日以上は掛かるかと思われます

【門番{かどの つがい}@創作少女】
[状態]:健康(おでこにたんこぶが2つできてます)、熟睡中
[装備]:レボワーカー@まじはーど
(損傷度0%、主電源入、外部スピーカー入、キャノピーオープン中)
[道具]:無し
[基本]:寝る!邪魔されたり襲われたら戦う、場合によっては殺す
[思考・状況]
1.後3分経ったら起きるつもりだったのに、邪魔されてとても気分が悪いので寝直す
2.寝直したらもう少し寝やすい場所を探すつもり

※門番は自分が今何処にいるのか知りません
※そればかりか、このゲームに巻き込まれていることにすら気付いていません
※ゴートを殴り倒した時の返り血が顔や服に付着したままです、なおこの件について全く覚えてません

※門番のデイパックはレボワーカーが鎮座していた後ろに置いてあるままです


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