鷲の少女

 
〔Ep1 小さな復讐者〕

「……一人で行動したかったとはいえ、
まさかこんな所に飛ばされるなんてね……」

陽が自分の真正面に上っている光景を見て
ハーフエルフの少女リネルは自分の現在地を知って落胆する。

「デイパック……というものらしいけど、
中に入っていた地図でとりあえず大体の位置は分かったわ」

そう、ここはB-3の山の頂……
このゲームの主催者キング・リョーナが転移魔法を使って
私を含む参加者をバラバラに飛ばしたんだろう。

そして私は不運にも(いや、幸運なのだろうか?)
こんな隔離されたような場所に飛ばされてしまい、
一人で現状把握をしていた。

「ゴートやダージュも離れてくれて助かったわ……
同じロアニーのメンバーではあるけど、
足手まといは何のメリットにもならないからね」

元より団体行動なんて邪魔以外の何物でもない上、
よぼよぼの爺とイッてるエルフと同行する気なんて
さらさらないリネルは、こんな険しい山頂でも
あまり文句の言葉は出さなかった。

もし……文句があるとすれば……

「……くっ……あの男……屈辱だわ………
ルールとはいえこんな首輪を付けられるなんて……」

リネルは首に取り付けられた爆弾付きの首輪を
ちゃらちゃらと動かし、恨めしげにキング・リョーナに悪態を飛ばす。

彼女は、常に自分が主導権を持ちたい思想の持ち主故に、
誰かに従するような錯覚の起こるこの首輪は、
自身を常に辱めてるようにも思えて仕方がなかった。

そんな屈辱を受けながらもリネルがゴートを介して
このゲームに参加したのには二つの理由があった。

「ナビィ……オルナ……エマめ………
今度は前のようにはいかないわよ……」

理由の一つは復讐だった。
捕らえてロアニーのアジトに連れて行くはずだったのに
三人の人外の少女達に返り討ちにされてしまったことに
彼女は激しい憤りを感じていた。

しかし、それだけの理由だったらこの舞台に参加せずとも
いくらでもその機会はあった。

「ここにはあの男が集めた、強い生気を持つ女が参加している……
私の目標を成就するために、必要な獲物が……」

信じられない話ではあるが、この幼い姿のリネルの実年齢は500を超える。
これはハーフエルフである彼女が女性から生気を奪い取り、それを禁術という、
高度だが、外道と分類される技術で若さへと転換している。

とある目標のため、彼女はこのゲームに参加した(させられた)
女性から生気を奪い取って殺すことが二つ目の理由だった。
 
〔Ep2 気付かぬ利害〕

すぐにでも行動を開始したいリネルだったが、
ゲーム開始前のホールには実力者がかなりいるのを感じ取り、
迂闊な行動は逆に自身を陥れてしまう。

彼女はデイパックを開き、自分の力と支給品と称される
道具の確認を始めた。

先ずは先程取り出した地図、
次に出てきたのは何かの会得書だ。
二つとも役に立つかどうかは期待薄といった所だ。

後は食料のパンと水の入った変わった筒が入っているだけで
戦闘に関係するアイテムは皆無だ。

「あの男……! 本気で私を馬鹿にしてるわね!?」

人一人を意図も簡単に殺せるのだから
当然のこと武器も豊富に持っていると踏んでいたため
こんな役にたたなそうなものを配られた側としては
遺憾としか思えなかった。

「もういいわ……そんなもの無くたって
私の力だけで参加者を皆殺しにしてあげる!!」

だんっ! だんっ!

激昂したリネルは何処とも知れず、
ただ獲物だけを追い求めて山を駆け下り始める。

リネル自身は頭に血が上っていて気付いていないが、
彼女が今現在駆け下りているスピードは
鷲が獲物を見定めて滑空するそれと
なんら変わり無いほどになっていた。

その訳は、無意識のうちに魔法を発動し、
ある文章を術式印語に転換したが故のことだった。

その文章とはリネルが先程取り出した本、
『怪盗の心得』という会得書に羅列されているもので
全貌は術式化出来なかったが成功した文面にはこう記されている。

雄々しき岩場あれば 其は鷲となりて空を舞うべし
海の如し水場あれば 其は蓮となりて水面に浮くべし
背の高き森閑あれば 其は風となりて狭間を縫うべし

怪盗の心得とは、盗みの技術が記されている訳ではなく
あらゆる地形を淀みなく、そして鋭敏に
行動するための心構えを詠ったものだ。

リネルの体はその文章の一つ目を付与して
あっという間に山を駆け降りて
真南方向の森の中へ入り込んだ。

驚異的な素早さをその身に宿したリネルだが、
哀れにも、その方角には復讐の対象となるナビィ達はおらず、
女性の影もどんどん薄れていくことを知りもせずに
ただ木々の間を縫うように走り抜けるだけだった………



【B-3:X2Y3→C3:X2Y2/山→森/1日目:午前】

【リネル@リョナマナ】
[状態]:健康、憤怒、素早さ急上昇
[装備]:血染めの布巻き エルブンマント(通常服装)
[道具]:デイパック、支給品一式、地図
怪盗の心得@創作少女
[基本]:リョナラー、ナビィ達か女性を探す
[思考・状況]
1.ナビィ達を殺す
2.女性を殺す
3.キング・リョーナには叶えてもらう望みもあるがぶっとばしたい
4.怪盗の心得を術に転換して素早さブースト中

※このまま直進しても桜は1マス先に進んでしまうので鉢合わせません。
※湖があるので書き手さんによって立ち寄るかそうでないかを決めてください。
※もしかするとリザードマンやリョナたろうに鉢合わせる可能性が高いです。
※冷静を欠いていて、奇襲で激しく傷つくことはありませんが
屈辱的な行為を受けてしまう可能性もあります。

※力がルシフェルなら、速と魔力はリネルで
同様に参加者を蹂躙します。

次へ
前へ

目次に戻る




inserted by FC2 system