お使い大作戦!?

 
「・・・どうしたの? 早くしてよ。」

初香はメイド服の女性を急かした。

「もぅ、分かってるわよっ。」

えびげんは少女に急かされ、渋々言われたとおりの体勢を取ろうとした。

「・・・あ、待って。」
「・・・なに?」

急かした本人に呼び止められ、えびげんは苛立ちを込めて問い返した。

「その前に、背中のデイパックをゆっくり足元に降ろして。で、一歩下がった所でやってよ。」
「・・・分かったわよ。」
(完全に私のこと信用してないわね、この子・・・。はぁっ・・・。)

えびげんは銃口で促され、ゆっくりとデイパックを足元に降ろし、床に伏せて両手を頭の上に組んだ。

「・・・これで、いいんでしょ?」
(うぇー・・・この床、結構冷たぁーい・・・。)

えびげんは少しだけ顔をあげて、少女に問い掛けた。

「・・・まぁ、いいよ。」

初香はメイド服の女性が不機嫌そうに問い掛けてきたのが鼻につき、態と溜め息混じりに答えた。
そして、彼女が予想通りに嫌そうな顔をしたのを、心の中で嘲笑【ちょうしょう】してから口を開いた。

「・・・どうやら、少しは信用してよさそうだね。」
「じゃあ、もう立っていい・・・」
「まだだよ。」
「はぁっ?」

彼女はショットガンを構えたまま制止を促すと、ゆっくりと近づいてくる。
えびげんは少しでも早く床から離れたかったが、まだ銃口は向けられている。
えびげんは仕方なく、そのままの体勢を保つことにした。

「・・・ねぇー、まだかなぁー? この床、意外と冷たいんだけど。」
「うん、ボクも裸だから床が冷たいのはよく分かる。・・・だからこそってのもあるんだよ。」

えびげんの問い掛けに少女は余裕の笑顔で答えた。
そして、えびげんにゆっくりと近づきながら口を開く。

「文句いいながらもちゃんと言うとおりにしてるなんて・・・。あなた、結構いい人だね。」
「・・・そう? そう思ってくれたなんて、嬉しいなー。」

そう思ってないクセに。と、二人は同時に心の中で悪態【あくたい】をつき、溜め息を漏らした。
それからすぐに、初香はメイド服の女性の傍らで立ち止まり、頭に銃口を突きつけた。
えびげんは頭上に微かに感じた冷たい感覚に、思わず固唾を飲み込む。
初香はゆっくりとしゃがむとえびげんのデイパックを片手に掴み、後退った。
えびげんは少女の行動に驚き、思わず顔をあげて問い掛けた。

「・・・って、ちょっ!? なにをしてるのよっ!?」
「あなたを信用してもいいけど、条件があるよ。」

えびげんの問い掛けに、少女は後退りながら答えた。
少女の言動に納得がいかないえびげんは問い詰める。

「いやっ、信用してるなら、私のデイパック持ってく必要なんて・・・。って、いうか条件ってなによっ。」

えびげんの問い掛けに少女は満面の笑みで答えた。

「とりあえず、テーブルクロスとかカーテンとかシーツみたいのを探してきてよ。デイパックはそれと交換ってこと。」
「・・・それって、人質、いえ、モノ質という・・・」
「あなたの立場で、ボクに反論が許されるとでも思ってるの?」

少女の嘲笑混じりの質問に発言を掻き消され、えびげんは溜め息混じりに答えた。

「・・・はーい。探してきまーす。」

えびげんは少女を刺激しないようゆっくりと立ちあがり、服の乱れを整える。

(ホンット、可愛くない子。楽な死に方できなくても知らないわよー。)
「・・・楽な死に方ができるなんて、思ってないからご心配なく。」
「――へっ!? えっ!? あ、いやっ・・・いっ! 行ってきまーすっ!」

少女に心の中を見透かされた気がして、居た堪れ【いたたまれ】なくなったえびげんは素早く踵を返して部屋を後にした。

〜〜〜〜

「・・・はい。これでいいですか、お嬢ちゃんっ?」

えびげんは建物内から集めてきた様々な布を、処女の足元へ態と乱暴に投げた。
初香は僅かに眉を顰【ひそ】めて答える。

「・・・まぁ、いいよ。・・・うん、あなたは少なくとも殺し合いには乗ってないみたいだね。」
「だーかーら、最初からそう言ってたじゃないっ!」
「そうだったっけ? ボク、そんな些細なことを一々覚えていられる程、優秀じゃないんだよね。」

初香は怒鳴り声をあげたメイド服の彼女を鼻で笑いながら、笑顔で応えた。

「はいはい、そうですかー。そうですかー・・・。」

少女の人を見下したような態度に、えびげんは怒りを通り越して呆れるしかなかった。
えびげんの呆れ口調に構うことなく、少女は投げ置かれた布の中から、手頃な大きさの赤いテーブルクロスを引き抜く。

「・・・ふぅ、これでとりあえず全裸だけは間逃れたよ。」
「それは、良かったねー。・・・で、良かったついでに、そろそろショットガン、下げてくれないかなぁ・・・。」

えびげんの提案に少女は溜め息混じりに頷くと、ゆっくりとショットガンを下げた。
そして、赤いテーブルクロスをローブのように身体に巻きつけ、ズレ落ちないようしっかりと固定した。
えびげんは命の危険を回避できたことに安堵の溜め息を漏らし、少女に話し掛ける。

「・・・でさ。」
「なに?」

少女の明らかに煩わしそうな視線に、神経が逆撫でされるのを感じながらもえびげんは平素を装って言葉を続ける。

「お互い、殺し合いにのってないことが分かったんだし、一応、自己紹介とかしない?」
「・・・名前だけならね。」

少女の素っ気無い反応にえびげんは心が折れそうになり、自己を奮い立たせるため態と少し声を大きくして自己紹介を始めた。

「私は、えびげん。」
「ふーん・・・。」
(『ふーん・・・。』って、まさかのノータッチですか・・・。流石を感じます。)

お世辞にも自分の名前、というよりコードネームは人名とは思えない。
普通ならば、なにかしらの反応があるはずである。
しかし、少女はなんの反応も示さなかった。
コードネームであることが見抜かれているのか、はたまた大して興味がないのか。
今までの言動からどちらの可能性も否定できないだけに、えびげんは彼女の反応に釈然としない思いを募らせた。

「ボクは、初香。」

そんなえびげんの思いを汲もうともせず、初香は淡々と名前を告げた。
そして、少し間を置いてから言葉を続けた。

「さて、早速なんだけど・・・。えびげんさん、1つ依頼したいことがあるんだ。」
「・・・なに?」

どんな厄介事を押し付けるつもりかと思ったえびげんは、少し強張った声で問い返す。
彼女の問い掛けに、初香は少し大きく息を吸ってから答えた。

「恐らく、此処から西へ1キロぐらい行った所に商店街があるはずだから、そこでボクが着れそうな服を数枚取ってきてくれないかな?」
「『取ってきて』って・・・面倒だし、一緒にくればいいじゃん。」

えびげんの溜め息混じりの反論に、初香は少し顔を俯かせて答える。

「・・・この格好で、ボクに表を歩かせるつもりなの?」

初香の恥ずかしそうな表情に、不意を突かれる形になったえびげんは思わずたじろいだ。

「う・・・わ、分かったわよ。仕方ないわね。」
(まぁ、元々行ってみるつもりだったしね・・・。)
「・・・助かるよ。・・・そうだ。もし首尾よく済ませることができたら、刃を飛ばせるナイフを1本あげるよ。」

ナイフ一本だなんてケチなことを言わずにショットガンを寄越せ。と言いそうになった口を慌てて押さえて、えびげんは何度も頷いた。
その様子を怪訝そうに見つめる初香だったが、面倒そうなので言及しないことにした。

「じゃあ、頼んだよ・・・。ボクはあなたが帰ってくるまで、此処で待機してるから。」

えびげんはデイパックを返してもらうと一旦初香と別れ施設を後にした。
そして、お使いを済ませるために急ぎ西へと向かった。

【A−4:X2Y3 / 国立魔法研究所 / 1日目:朝】

【登和多 初香{とわだ はつか}@XENOPHOBIA】
[状態]:健康
[装備]:ショットガン(残弾数3+15)@なよりよ
赤いテーブルクロス@バトロワ
[道具]:デイパック、支給品一式
火炎放射器(残燃料100%)@えびげん
スペツナズ・ナイフx10@現実
[基本]:殺し合いからの脱出
[思考・状況]
1.えびげんが服を探してくるまで待機、見事気に入った物があったらスペツナズ・ナイフを1本あげる予定
2.仲間と情報を集める

【A−4:X1Y3 / 草原 / 1日目:朝】

【えびげん@えびげん】
[状態]:健康
[装備]:メイド服@えびげん
[道具]:デイパック、支給品一式
髪飾り@DEMONOPHOBIA
エルデクーヘンx3@創作少女
魔封じの呪印@リョナラークエスト
[基本]:武器が欲しい
[思考・状況]
1.仕方ないので商店街まで初香の服を探しに行く
2.ついでに武器になりそうな物を漁る
3.ナイフはないよかマシ、でも本音はショットガンが欲しい

@後書き
即投下してみました。
かなり原作と違うキャラになってしまった気がしてます。orz

次へ
前へ

目次に戻る




inserted by FC2 system