その場は暗澹とした空気に包まれていた。
原因は先ほどの放送である。
「……冥夜……何で……!?」
「……オルナ……嘘だよ……オルナが……!」
明空が呆然としながら弟の名前を呟き、ナビィが涙目で仲間の名前を
呼びながら声を詰まらせる。
「……カザネ……!」
(こんな……こんなことって……!)
エリナの悲痛な表情、アール=イリスの嘆く声。
放送により、和やかだった先ほどの空気が一変してしまった。
クリス、伊予那、なぞちゃんはそんな三人の様子に何も言うことができなかった。
(……ある程度は覚悟していたけど……まさか、こんなに一気に……)
クリスは胸中で苦い思いを噛みしめる。
予想以上の死者の数、そしてその死者に含まれていた自分たちの関係者の多さ。
クリス自身も、親友の弟の名前が呼ばれたのだ。
動揺はあるし、彼を守れなかったことに対しての悔恨は深い。
「……俺は信じない……」
やがて、明空がぽつりと呟いた。
怪訝な顔で、他の五人が明空のほうに視線を向ける。
「……あんなヤツの言うことなんか……冥夜が死んだなんてことなんか、俺は信じない!」
明空が視線を上げて、大声で放送を否定する。
「そ……そうです!きっと、あの人は嘘吐いてるです!
明空の弟さんや、エリナたちのお友達が死んじゃうなんてこと、あるわけ無いです!」
なぞちゃんが明空に慌てて同意する。
それを聞いたナビィも呟く。
「そうだよ……そうだよね!オルナが死んだなんてあるわけないよ!
あんな殺しても死ななさそうな毒舌エルフがこんな簡単に死んじゃうなんて
絶対おかしいもん!」
「そうさ!アイツは俺たちを騙すために嘘を言ってるんだ!」
その会話の流れにクリスは眉を顰め、伊予那は不安そうな顔で明空たちを見ている。
「ちょっと貴方たち……」
「……待って……」
明空たちを嗜めようとしたクリスだが、エリナはそれを制止した。
「今はあのままでいいわ……いえ、今あの子たちに放送が正しいと
認めさせてしまったら、どうなるか分からない……」
「……そうね。最悪、このパーティが崩壊してしまうかもしれないし、
今は時間を置いて、冷静になってもらったほうがいいわね……」
そして、クリスは気遣うようにエリナに声をかける。
「……貴女は大丈夫なの?」
「……心配しないで。ショックはあるけど、立ち止まるつもりはないわ」
エリナは気丈に振舞っているつもりだろうが、クリスには無理をしているようにしか
見えなかった。
「……やっぱり、私たちも同行したほうがいいかもしれないわね。
私の探し人も死亡してしまったし、国立研究所に行く意味も薄くなったわ。
死亡者の多さから考えて、皆で固まっていたほうが安全かも……」
エリナの様子に不安を感じたクリスは皆で固まって動くことを提案する。
だが、エリナはそれに対して首を横に振る。
「……駄目よ。むしろ死亡者が多いことを考えたら、探索範囲を広げて
一刻も早く仲間や情報を集めないと、私たちに勝ちの目は出てこない。
もたもたしていたら、手遅れになるわ」
「…………」
クリスは黙って、エリナの目を見つめる。
だが、エリナは視線を逸らさなかった。
エリナの意志は固いようだ。
クリスは溜息を吐いて、折れる。
「……無理だけはしないでね。亡くなった人のことを忘れろとは言わないけど、
そのことを引きずっては駄目よ」
「……分かっているわ」
クリスは他の四人に声をかける。
そして先ほど話した通り、元の組に分かれて、クリス組は国立魔法研究所、
エリナ組はアクアリウムに向かうことにした。
「冥夜を見つけたら俺のことを伝えてくれよ!」
「オルナもね!それから、エマとカナリアのこともお願い!」
「……ええ、安心しなさい」
何度も振り返りながら手を振っている明空とナビィをクリスがたしなめながら、
彼らは北のほうへ向かっていった。
【B−4:X2Y2/廃墟/1日目:真昼】
【クリステル・ジーメンス@SILENT DESIRE】
[状態]:健康、魔力残量十分
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式(パン1食分消費)
モップ@La fine di abisso
白い三角巾@現実世界
雑巾@La fine di abisso
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.国立魔法研究所に向かう
2.道中でアーシャ・リュコリスかエリーシア・モントールと会えたら合流する
3.首輪を外す方法を考える
※明空のことが何故か気になってます、もしかしたら惚れました
【御朱 明空(みあか あそら)@La fine di abisso】
[状態]:健康
[装備]:ブロードソード@アストラガロマンシー
(ナビィにもらった。鞘から抜くつもりは無い)
[道具]:デイパック、支給品一式
おにぎり×4@バトロワ
ランチパック×4@バトロワ
弁当×1@バトロワ
ジュース×3@バトロワ
包丁@バトロワ
ライター@バトロワ
傷薬@バトロワ
包帯@バトロワ
マタタビの匂い袋(鈴付き)@現実世界
ツルハシ@○○少女
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.国立魔法研究所に向かう
2.冥夜の死は信じない
3.行き先はクリスの意見に従うつもり
4.殺し合いに乗る人なんていないと思ってる
※何かあったら自分が身体を張って仲間を守るつもりです
【ナビィ@リョナマナ】
[状態]:正常
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式(パン1食分消費)
ノートパソコン&充電用コンセント(電池残量3時間分程度、主電源オフ、OSはWin2kっぽい物)@現実世界(本人は未確認)
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.国立魔法研究所に向かう
2.オルナの死は信じない
3.明空についてマタタビの匂い袋が他人の手に渡らないようにするつもり
4.キング・リョーナの行いをやめさせる
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