溺れる者は……

 

焼け焦げた大地、そして巨大な穴が開けられた大木。
エルフィーネの強大な魔法により、辺り一帯は焦土と化していた。

それをなした張本人であるエルフィーネ。
しかし、彼女はこの恐ろしい事態を引き起こした当人はそれを成したときとは
別人のような無気力な様子を見せていた。
だらんと地面に腰を下ろしたまま、彼女は一時間近くその場から動いていなかったのだ。

(私は……これからどうすれば……)

美咲を……大切な人を失った。
そして、大切な人を奪った憎い仇への復讐も果たした。

では、これから自分はどうすればいいのか?

エルフィーネはすでに生きる希望すら無くしており、何をするにもただ億劫だった。
鬱蒼とした森の中で力の抜けた様子で地面に座るエルフィーネだったが、
ふとシノブとロシナンテの会話を思い出していた。

『心配するな・・・死ぬのは・・・初めてじゃない・・・。』
『はっ!? ど、どういう、意味だよ・・・!!』
『私は・・・既に一度・・・死んでいるんだ・・・。』
『なに・・・言ってんだよ・・・冗談は・・・よせって・・・!!』
『冗談ではない! 私はこの世界に来る前、勇者と名乗る者達と戦い、一度殺されているのだ・・・。』
『なん・・・だって・・・!?』

その会話の内容を思い出したエルフィーネは目を見開いた。

「ちょっと待ってよ……?ロシナンテは一度死んでいた……もしこれが本当なら……!」

ロシナンテの言っていたことが事実なら、彼女は生き返らされた状態でこの殺し合いに
参加させられていたことになる。

それはつまり……。

「主催者には……あのキング・リョーナと名乗る男には、死者を蘇らせる力がある……!?」

そう、ロシナンテが誰かに蘇らせられたのだとしたら、それはこの殺し合いの主催者である
キング・リョーナが蘇らせた可能性が一番高い。
もし蘇らせたのが彼で無くても、全くの無関係ということは無いだろう。

「もし……もし死者を蘇らせることが可能なら、美咲も……!」

エルフィーネの顔は生きる気力を失っていた先ほどとは打って変わり、
その瞳には希望が芽生えていた。

命を失ってしまった大切な人を生き返らせることができるかもしれない可能性を
見つけることができたのだ。
絶望の中に一筋の光明が見えたのだから、今の様子も無理からぬことであろう。

もちろん、エルフィーネは死者が蘇ったというような世迷言を100%信じているわけではない。
いや、普段の彼女ならば考える必要もなく斬って捨てるような考えだっただろう。

だが、今のエルフィーネは鬼龍院 美咲というかけがえの無い存在を失ったことで絶望していた。
そんなとき、目の前に希望の糸が垂らされたのだ。
たとえ、その糸がどんなに細く頼りないものであったとしても、それ以外に縋るものが
無かったとしたら、人はそれに縋りつくのだ。

溺れる者は藁をも掴む。

エルフィーネにとって、美咲のいない世界など考えられなかった。
もし美咲を生き返らせることのできる可能性があるとしたら、
エルフィーネはそれを叶えるためには手段を選ばない。

エルフィーネは幼い容姿に凄絶な笑みを浮かべて呟く。

「そう……そうよ……!もしあの男が美咲を生き返らせることができるのなら……
 この場の全員を殺して私が優勝すれば、願い事で美咲を生き返らせることができる……!」

ヤツは優勝者には一つだけ願いを叶えるといっていた。
つまり、優勝すれば美咲を生き返らせることができるかもしれないのだ。

もしヤツが願い事を叶える気など最初から無かったとしても、問題無い。
キング・リョーナが人間を生き返らせる能力があるのなら、何が何でも美咲を
生き返らせるように脅しつけるなり拷問するなりして従わせればいいのだ。

「やることは決まったわ……!私はこの殺し合いで……優勝するっ!!」

エルフィーネは決断した。
自分はこの殺し合いに優勝する、と。

「……さて、そうするとまずは魔力の回復ね。
 あんなクズに全力を使ってしまったせいで、私の魔力は現在ほぼゼロ……。
 危険はなるべく避けて、慎重に行動する必要があるわ」

エルフィーネは立ち上がり、行動を開始しようとした。

だが、ふと視界の端に何かが映る。
そちらに目をやると、人間らしき影が倒れているのが見えた。

近付いて確認してみると、今の自分とそう年の変わらない少女が右腕を失い、
顔に大火傷を負って死んでいた。

「私の魔法に巻き込まれたのね……悪いけど、謝りはしないわよ。
 私は美咲を生き返らせるために優勝するんだから……」

だが、エルフィーネはこの少女に強い魔力を感じ取った。
すでに死亡していることから、その身体からは魔力が霧散し始めているが、
今ならある程度の魔力補給が可能かもしれない。

「使えるものは何でも有効に活用しないとね……」

エルフィーネはロザリオをかざすと、少女の身体に残った魔力を根こそぎ奪い取った。
半分以上の魔力がロザリオに補給され、エルフィーネは満足気に笑みを浮かべる。

そして、エルフィーネは少女のデイパックを回収すると安全に休憩できる場所を
求めて行動を開始したのだった。






【リネル@リョナマナ 死亡】
【残り26名】

【D−3:X1Y4/森/1日目:午後】

【エルフィーネ@まじはーど】
[状態]:所々に軽い擦り傷の痕、精神疲労中、魔力60%
[装備]:ロザリオ@まじはーど
[道具]:デイパック、支給品一式×2(食料24食分、水24食分)
    モヒカンの替えパンツx2@リョナラークエスト(豹柄とクマのアップリケ付きの柄)
怪盗の心得@創作少女
弓@ボーパルラビット
聖天の矢×20@○○少女、
赤い札×9@一日巫女
弦の切れた精霊の竪琴@リョナマナ
レイザールビーのペンダント@現実世界
木人の槌@BB
サングラス@BB
ラブレター@BB
切れ目の入った杖(仕込み杖)@現実過去世界
ラウンドシールド@アストラガロマンシー
ファルシオン(曲刀)@現実過去世界
首輪探知機@バトロワ(破損、首輪の反応の有無のみ判別可能)
[基本]:優勝して、美咲を生き返らせる
[思考・状況]
1.魔力を回復する

※とりあえず初めて出会う相手にはエルと名乗ることにしています



【リネル@リョナマナ】
[状態]:死亡
[装備]:血染めの布巻き(ボロボロ)、エルブンマント(通常服装、ボロボロ)
[道具]:無し






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