リョナたろう、リゼ、エマは昏い街に辿り着いていた。
休憩する場所としては、近くでは昏い街が一番妥当だろうと考えたためだ。
「ようやくついたか……目の前の建物は宿屋のようだし、
さっそく休むとするか。見張りは頼んだぞ、お前ら」
「死ねばいいのに」
「まぁまぁ、実際リョナたろうは疲れてるみたいだし、
私たちはまだ元気なんだから、しょうがないよ」
三人はさっそく休息を取ろうと宿屋に入ろうとして……。
「あっ!?お前!?」
いきなり横合いから聞こえてきた声に、三人は振り向く。
そこには、街の探索をしていた桜、鈴音、八蜘蛛が立っていた。
「!」
リョナたろうは桜の姿を確認した瞬間、魔弾を放った。
「なっ!?くそっ!」
桜はそれをハンマーでガードしつつ、鈴音と八蜘蛛を庇うような位置を取る。
一方、リョナたろうが攻撃を行ったことにより、リゼとエマも桜たちから
距離を取り、警戒態勢を取っていた。
「……また会ったね、前髪」
「できれば会いたくなかったけどな、短髪女。
……てか、前髪ってひどくね?」
リョナたろうの抗議の声に答えず、桜は目を細めながら言う。
「アンタはやっぱり殺し合いに乗ってんだな。
あのトカゲは私を助けてくれたってのに……」
「……は?」
桜の言葉に、首を傾げるリョナたろう。
「……リョナたろう、殺し合いに乗ってるってどういうこと?」
「……やっぱり嘘吐いてたんだ。死ねばいいのに」
エマ、リゼから疑惑の目を向けられ、リョナたろうは慌てる。
「い……いや、ちょっと待て!俺は(一応)嘘はついてないぞ!
俺は殺し合いに乗ってないし、攻撃してきたのはあの女のほうだ!」
「嘘吐け!いきなりさっきの技で攻撃を仕掛けてきたのは、そっちじゃないか!」
「何言ってやがる!それよりも前に、お前が爆破の攻撃を仕掛けてきたんだろうが!」
「はぁ!?知らないぞ、そんなの!?」
「とぼけんじゃねぇ!!」
ギャーギャー言い合いを始める二人。
それに対して、他の4人は困惑する。
「……えーっと……ひょっとしたら、お互いに誤解があるのかもしれないよ?
二人とも、少し話し合ってみない?」
鈴音の言葉に、黙る二人。
そして、お互いの情報交換が始まった。
「……つまり、あの爆破の攻撃はお前じゃなかったってことか?」
「だから、そう言ってるだろ。全部アンタの誤解だったんだよ」
桜の言葉に、むっとしたリョナたろうは言い返す。
「……まぁ、お前の話が本当だったらだけどな」
「お前、私が嘘吐いてるって言うのかよ!?」
今度は、リョナたろうの言葉に桜が怒りだす。
「ちょ……ちょっと、二人とも落ち着いてよ!?」
「そうだよ!こんなところで喧嘩してる場合じゃないでしょ!?」
鈴音とエマが二人を止めようとする。
だが、二人の言い合いは止まらない。
「そういえば、お前デイパックをすり替えていったな?
あれはどういうつもりだったんだ?」
「あ……あれは、私のと間違えただけで……!」
「どうだかな。中に変な道具が入ってたが、
アレはお前が仕掛けた罠だったんじゃないのか?」
「!……いい加減にしろよ、この野郎!!」
とうとう切れた桜は、ハンマーを構えてリョナたろうと対峙する。
リョナたろうも氷のナイフを構え、桜の動きに警戒の姿勢を取る。
その様子に青くなる鈴音。
リゼとエマは呆れた視線を二人に向け、八蜘蛛は不安そうな面持ちを見せつつ
内心で二人を嘲っていた。
だが、一触即発と思われた両者の空気は次の瞬間、割って入った異物に
よって壊された。
ずしゅっ。
「……え……?」
呆けた声を漏らすリゼの胸を、刃が貫いていた。
「……ぁ……」
心臓を一突きにされたリゼはそのまま力を失って崩れ落ちた。
「……リ、ゼ……?」
エマは呆然とした表情でリゼの名前を呼ぶ。
だが、リゼはそれに反応せず倒れたままだ。
倒れたリゼの後ろには ―― 刀を構えた黄土の巨人・ルシフェルの姿があった。
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