時限式モヒカン爆弾

 

爆発により荒れ果てた国立魔法研究所。
そこで、ナビィやえびげんを待ち伏せるために罠を張っていたダージュは
放送が終わったと同時に、忌々しそうに吐き捨てた。

「くそったれが……!
 よりによって、ここが禁止エリアに指定されるとは……!」

先ほどの放送によって、A−4エリア……つまりダージュたちがいる国立魔法研究所が
2時間後の禁止エリアに指定されてしまった。

それはすなわち、この場にてナビィたちを待ち伏せることができなくなったことを
意味する。

「……まぁ、こうなった以上は仕方ない。
 さっさと支給品をまとめて、ここから離れるぞ」

ダージュは待ち伏せの手を潰されたことにいつまでも拘泥する愚を犯さず、
速やかにこの場を離れることを同行者に提案する。

だが、同行者であるモヒカンは呆然とした表情で固まっているだけだった。

「……おい、どうした?」

ダージュはモヒカンの様子がおかしいことに気が付き、怪訝な表情で問いかける。
だが、モヒカンはその問いかけに答えない。

そして、彼の表情はみるみる憤怒の色に染まっていった。

「……ふざけるんじゃねぇぞ……!
 オーガだけでなく、リョナたろうたちまで……!」

地獄の底から響いてくるかのようなモヒカンの怨嗟の声。
それを聞いたダージュはモヒカンの変貌の理由を理解し、目を細める。

(……なるほど、お仲間が死んじまったってわけか……)

ダージュにとっては、モヒカンの仲間が死のうがどうでもいいことだ。
モヒカンの仲間なら利用できる駒にはなったかもしれない。
だが、元よりダージュは必要以上に他の人間と慣れ合うつもりなどないのだ。
死んだなら死んだで構わないし、興味など無かった。

「……ま、ご愁傷様と言っておこうか。
 だが、俺たちのやることは変わらないはずだぜ。
 まずは支給品をまとめて、一度ここを離れる。
 ヤツらを殺すのはそれから……」
「何言ってやがる!!?ここが禁止エリアになっちまったなら、
 あのメイド女がここに戻ってくる保証はねぇだろうが!!?
 一刻も早くヤツらを追うべきだ!!」

ダージュの言葉を遮り、モヒカンは吠える。
モヒカンの言葉に、ダージュは冷たい視線を向ける。

「落ちつけよ、変態。俺たちは先ほどの戦いで消耗してる。
 罠を張って待ち伏せるならともかく、こっちから出向くのは
 悪手だぜ。ここは一旦引いて……」
「うるっせぇんだよ、もやし野郎が!!」

モヒカンはダージュの胸倉を掴み上げる。
その表情は赫怒に染まり、今にもダージュをくびり殺さんばかりの勢いだった。

ダージュは息苦しさに表情を歪めながら、モヒカンを睨みつける。

「いい加減にしろよ、テメェ……!
 テメェは今、あの分身の魔法をどれだけ使える……!?
 せいぜい、あと1回使えるかどうかってとこだろ……!」
「……ぐっ……!」

ダージュの言葉に詰まるモヒカン。

襲撃前に休息を取ったとはいえ、モヒカンの魔力は完全には回復していなかった。
その状態で、モヒカンはクリスと激しい戦闘を繰り広げたのだ。
そして、クリスのリフレクトによって的確に攻撃を防がれていたせいで、
戦いはかなりの長期戦となっていた。
そのせいで、モヒカンはイリュージョンを持続させるために大量の魔力を消費せざるを
得なかったのだ。

「……関係ねぇ!!俺はヤツらを追うぜ!!
 俺はもう我慢ならねぇんだよ!!
 アイツらは全員死んじまったってのに、
 オーガを殺したあのメイドはのほほんと生き残ってやがる!!
 1分1秒でも早くぶっ殺してやらねぇと腹の虫が収まらねぇ!!」
「……そうかよ、じゃあ勝手にしやがれ」

ダージュは完全に頭に血が上った様子のモヒカンを見て、もはや説得は無駄だと
判断した。

「俺は別行動を取らせてもらうぜ。
 お前の暴走に付き合ってやる義理はないからな」
「はっ、逃げたいなら逃げやがれ!!
 その代わり、お前が殺したがってたナビィって女も俺が頂くがな!!」

モヒカンの言葉にダージュの瞳が一瞬鋭くなる。
だが、モヒカンはそんなことに気づかず、今にも商店街に向かおうとしていた。
ダージュの話から、えびげんたちが商店街へと向かったのは分かっている。
急いで走りだそうとするモヒカンを、ダージュは呼びとめる。

「……そこのツルハシとデイパックの一つくらいは持っていったほうがいいだろ。
 ツルハシ程度でもその粗末な棍棒よりかは役に立つはずだし、食料や地図が
 無いと困るだろ?」

そう言って、ツルハシとデイパックをモヒカンに放るダージュ。
受け取ったモヒカンは戸惑った顔を見せたが、舌打ちしてそっぽを向く。

「……礼は言わねぇぜ」

そう吐き捨て、その場から走り去っていった。
それを見送ったダージュは目を細め、酷薄な笑みを浮かべる。

(……ま、せいぜい女どもに手傷を負わせた上で死んでくれよ?
 そのために、特別なプレゼントもしてやったんだからなぁ……?)

ダージュはモヒカンがえびげんたちに勝てるとは露ほども思っていなかった。
よって、ダージュはモヒカンが殺されることを見越して、罠を仕掛けた。

ダージュがモヒカンに渡したデイパックと支給品……実は、それら全てにダージュの
ディレイ・スペルが掛けられていたのだ。

モヒカンを倒したえびげんたちは、当然彼の支給品を回収するだろう。
そして、何も知らない彼女たちは支給品にかけられたディレイ・スペルが
発動したときには、防御も回避も臨めない。
間違いなく、為すすべもなく大ダメージを受けるだろう。

その場合、ただの人間であるえびげんはあっさり死ぬかもしれない。
だが、人描と人間のハーフであるナビィは、ダメージを受けつつも持ち前の敏捷さと
反射神経で生き残る公算が高いとダージュは考えていた。

そして、ディレイ・スペルの発動によってナビィの居場所を感知したダージュは、
その場へと赴き、ナビィを嬲り殺すという作戦だった。

つまり、ダージュは制御不可能となったモヒカンを切り捨て、罠として
利用することにしたのだ。

「くくっ……悪く思うなよ?お前だって俺を利用する気だったんだろうし、
 お互い様ってやつさ……」

そう言って、ダージュは低い声で嗤い続ける。

後はディレイ・スペルが発動するのを待つだけだ。
モヒカンが自分の都合の良いように動いてくれるのを期待しつつ、
ダージュはゆっくりと歩き出すのだった。
 
 


【A−4:X2Y3 / 国立魔法研究所 / 1日目:夜】

【モヒカン@リョナラークエスト】
[状態]:顔面に落書き、おでこにたんこぶ、生傷多数
[装備]:ツルハシ@○○少女
[道具]:手製棍棒×5
≪以下ディレイ・スペル付与支給品≫
デイパック、支給品一式
包丁@バトロワ
ライター@バトロワ
マタタビの匂い袋(鈴付き)@現実世界
スペツナズ・ナイフx2@現実
三八式歩兵銃+スコープ(残弾1発、肩掛け用のベルト付き)@現実世界
[基本]:女見つけて痛めつけて犯る
[思考・状況]
1.女を見つけたらヒャッハー
2.商店街へ向かう(途中でミアたちを見つけたら殺す)
3.初香、えびげん、ミア、美奈、クリスを殺す

※東支部でのオーガ達との戦闘中の記憶が殆どありません
※これまでに受けた傷はダージュの魔法でかさぶた程度まで回復しました。


【ダージュ@リョナマナ】
[状態]:疲労(中)、精神疲労(小)、魔力消費(大)
[装備]:トルネード@創作少女
デコイシールド@創作少女
[道具]:デイパック、支給品一式×5(食料21食分、水21食分)
宝冠「フォクテイ」@創作少女
火薬鉄砲@現実世界
(本物そっくりの発射音が鳴り火薬の臭いがするオモチャのリボルバー【残り6発】)
エリクシル@デモノフォビア
赤い薬×3@デモノフォビア
魔封じの呪印@リョナラークエスト
髪飾り@DEMONOPHOBIA
涼子のナイフ@BlankBlood
エリクシル@SilentDesire
火炎放射器(残燃料100%)@えびげん
モップ@La fine di abisso
白い三角巾@現実世界
雑巾@La fine di abisso
木彫りのクマ@現実世界(一般的なサイズのもの)
人肉(2食分)@リョナラークエスト
新鮮な人肉(当分は無くならない程度の量)
クラシックギター@La fine di abisso(吟遊詩人が持ってそうな古い木製ギター)
ノートパソコン&充電用コンセント
(電池残量3時間分程度、OSはWin2kっぽい物)@現実世界
AM500@怪盗少女(残弾0発)
ミアたちが筆談に使っていたメモ用紙(支給品の一部)
[基本]リョナラー、オルナの関係者を殺す
[思考・状況]
1.モヒカンを利用して、ナビィに手傷を負わせる。
2.ナビィを弄り殺す。
3.オルナの関係者を殺す。(誰が関係者か分からないので皆殺し)


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