〜〜〜〜 気づいたら薄暗い部屋に閉じ込められていた。 部屋を調べていると急に部屋に光が差し込んできたので、 そこから光の差し込んできた方を見てみたら主催者が居たという所から。 〜〜〜〜
窓らしき場所から覗き込んだわたしの視線の先には、男がいた。 見た目は軟弱そうな、どこにでも居そうな男だった。 しかし、わたしは直感した。あの男がわたしを此処に閉じ込めたのだと。 どんな方法でかは分からないし、目的も皆目見当がつかない。 だが、わたしをこんな所に閉じ込めた天罰【落とし前】はつける。 (ビンタ100回かな?いや、でも弱そうだし、50回で許してあげようかな?うーん、) わたしが頭の中でヤツに与える天罰の内容を考えていると、ヤツが何やら話し始めた。 「レディースアーン・・・ヤロウはいいか。」 「君達に集まって貰ったのは他でもない、僕の”暇潰し”に付き合ってほしいんだ。」 (”暇潰し”?) 天罰の内容を考える事に夢中だったわたしは、ヤツの話など殆ど聞いていなかった。 加えて言うならば聞くつもりもなかった。 だが、偶然にも耳に飛び込んできた『暇潰し』という単語に、何故か反応してしまった。 「・・・僕はね、女の子が大好きだ。」 (はっ?) 男の子が女の子が好きというのは分かる。実に当前だ。 わたしだって、いい男性【ひと】が居たら付き合ってもいいかなとか考えた事もある。 尤も、そんな話を教会の目が届く所でしたら『なんて、穢らわしい。聖職者たるもの云々・・』と、 ぶっ倒れるまでお説教をされるに違いないので口に出した事はない。 だが、それと”暇潰し”の関係がいまいち理解できない。 ハーレムをつくる・・にしてはこの仕打ちはあんまりだ。 「特に、可愛い女の子が無残にも壊され、泣き叫び、犯され、恐怖と絶望に顔を歪めながら事切れる様を見るのが大好きだ。」 「なんですとぉっ!?」 わたしはヤツの言葉に思わず声を荒げてしまった。 何が『恐怖と絶望に顔を歪めながら事切れる様を見るのが好き』だ。 そんな事言う輩は大抵根性のひん曲がったロクでもないヘタレで、誰かがガツンと正義の鉄槌を食らわせてやらないと目が醒めない。 「・・・よし!グーパンチ1万回!わたしがあんたのヘタレ根性叩き直してあげるっ!」 わたしはヤツへの天罰をそう決めると、何とかヤツの元へ行けないかと思考を巡らせた。 ヤツは無邪気な明るい声で言葉を続ける。 「というわけで、今日集まってもらった僕のお嬢さん、お姉さん方。」 「殺しあってよ。」 「はいぃ??」 何を言い出すのかと思ったら、『殺しあえ』だって? 破綻している。そんな事頼まれたって誰もするわけがない。 少なくとも、わたしはしない。 「あ、みんな『誰がそんな馬鹿げた事するか。』とか思ってるでしょ?」 当たり前だ。いいからさっさと此処から出せ、あたしが天罰を与えてやる。 「そうだよねー、うんうん。わかーるわかるよー君の気持ちー♪」 「・・というわけで、こんなの付けさせてもらいマスタ!(キラーン☆)」 そう言って突き出されたヤツの右手には、首輪のような物が1つあった。 言われるまで気づかなかったが、確認してみると確かにわたしの首に何か巻かれている。 「これはねぇ、僕が1日徹夜して考えた素敵アイテムなんだよ。」 ヤツが持っていた首輪を前に投げ捨てた。わたしの視線は自然とその首輪を追っていた。 「僕がこうして、ちょっと意識を集中させると・・。」 ヤツの言葉がそこで一旦止まった。そして・・・破裂音。 「ボンッ!ってなるんだよ。どう?凄いでしょ?」 窓越しであったせいか音はそれほどでもなかったが、確かに威力は凄そうだ。 わたしの首元で爆発したら・・と思わず想像してしまった。
「僕としては、今のでみんな分かってくれたと思うんだけど。」 「『どうせ見た目だけ』と高をくくってる子のために、もっと分かりやすくしてあげるよ。」 わたしが自身の悲惨な光景を想像して戦慄【わななか】せていた事を知ってか知らずか、ヤツはそう言って指を鳴らした。 すると、突然ヤツの隣に一人の女性が現れた。 ショートカットの活発そうな女の子で、歳はわたしと同じぐらいだろう。 首にはあの首輪が巻かれている。 女の子は何か言いながら激しく何かを叩いている。 恐らく、透明な壁のような物があるのだろう。 「分かりやすくって・・まさか!?」 わたしは今し方忘れ去ったばかりの悲惨な光景を再び思い出した。 ヤツは彼女を使い、それを現実の物としてわたしに見せようとしている。 「やめなさい!ちょっと!コラッ!聞けって!聞こえてるんじゃないの!?おーい!」 あんな光景は現実にしちゃいけない。そんな気持ちも確かにあった。 それ以上に、彼女があのヘンタイ男の歪んだ性癖のために、 その尊い命を奪われようとしているという事がわたしには堪えられない。 彼女を救わないと。わたしは必死に声をあげ、窓を叩き、ヤツを睨み続けた。 ピッ。 言葉にするとそんな感じの音が、突然鳴り始めた。わたしは驚いて一瞬動きを止める。 「さっきはすぐに爆発させちゃったけど、本当はこうやってタイマーが働くんだよ。」 ヤツはにやけながら鳴り始めた音について説明を始める。 「この音が段々早くなって行って、そうだね。今の設定だと5分後ぐらいかな?」 「まぁ時間が来たらさっきみたくボン!ってなるのさ。素晴らしいでしょ?」 ヤツは一人でケタケタ笑い始めた。なんてヤツなんだろうか!あたしが早く天罰を与えなくては! わたしはヤツを睨み付けながら一段と強く、大きく、声を荒げ窓を叩き続けた。 「やめなさいってば!このヘンタ・・へっ!?」 突然、目の前にあった硬く冷たい感覚が無くなった。 「!っ、痛たぁー・・。」 一瞬の事のように思えた。何が起こったのかまったく分からない。 気が付くとわたしは尻餅を付いていた。今分かっているのはそれだけだった。 何が起きたのか今一度整理したい気持ちを抑え、わたしは素早く立ち上がり周りに注意を向けた。 戦士としてのわたしがそうさせた。 普通の聖職者にはない思考。わたしが周りから時に白い目で見られる原因の思考。 この時ほど、わたしは戦士としてのわたしが在る事を感謝した事はないだろう。 「・・・ちょうどよかった。あたし、あんたに用事があったの。」 視線の先にはヤツが居た。 そして、わたしとヤツの間にはつい先ほどまで在った分厚い障害物はない。 これは願ってもないチャンス。わたしは今、ヤツと同じ場所にいる。 あの甲高い無機質な音がさっきよりもちょっとだけ早くなった気がする。 ショートカットの彼女は顔をぐちゃぐちゃにしながら透明な壁を叩き続け何かを叫んでいる。 このままでは彼女の精神が参ってしまうだろう。あまり悠長な事をやっている余裕はない。 「うん、僕も用事があったんだ。いや、もしかしたら無かったかも。」 「はぁ?ハッキリしない男って大っ嫌い。」 「まぁ、ちょっとだけお話きいてよ、ルカお嬢ちゃん。」 「!」 わたしはヤツに名前を名乗った記憶はない。なのに、ヤツはわたしの名前を知っている。 今目の前でニヤけている男は、単なる気紛れでわたしを此処に連れて来たわけではない。 直感的にわたしはそう悟り、身構えた。 「君を含めて、何人かやっぱり同じように力づくでも止めさせようとしている子が居るんだけどね。」 「ちょっとうるさいから、その子らを黙らせるために代表して君を使おうかなって思ったわけですよ。」 「これから始まる楽しい”ゲーム”の余興も兼ねてね。」 ヤツは相変わらずニヤニヤと下衆なニヤケ顔を浮かべながらそう言った。 「『ゲームの余興』ですって?」 わたしはもう我慢の限界だった。 名前を言い当てられた事で警戒して今まで様子を見ていたが、もうだめだ。 この男を神様に誓ってぶちのめさないと気が済まない。 そして、彼女を救って此処から出る。ヤツの”ゲーム”とやらを開始前にゲームオーバーにしてやるんだ。 「うん。余興。ルールは簡単だよ。時間内にお嬢ちゃんが僕を倒せたらあの娘【こ】は助かるの。」 「へぇー・・。」 「というわけで、あの娘、助けたかったら僕を倒してよ。お・じ・ょ・う・ち・ゃ・ん。」 態と『お嬢ちゃん』を強調したヤツの言葉に、わたしは完全に緒が切れた。 「もう許さない!神様が許しても、あたしが許さない!」 わたしは素早く腰の愛刀を抜き、ヤツに向かって飛び掛った。
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