結局変身できずにすぐそばに落ちてるステッキに手を伸ばしながら力尽きる

 
まゆこは今、あの男に殺し合いを強要された挙句、ステッキを奪われていた。
回収は絶望的かと思っていたが、偶然出会った少女がステッキを持っていた。
まゆこの願いを素直に聞き入れてくれた彼女からステッキを受け取ろうとした矢先、突然まゆこは何者かに突然後ろから掴まれ放り投げられた。

「・・・いったぁ〜い!」

投げ飛ばされたまゆこはお尻を激しく地面に打ち付けた。
ついでに手や足も何処か擦り剥いたのかじんじんしており、何時もより若干体温が高く感じていた。

「どうしよう、ステッキがあんなところに・・。」

まゆこは自分が本当なら受け取るはずだったステッキを探した。
どうやらあの少女が現れた物の出で立ちに恐怖し、その場に落として逃げ去ってしまったらしい。
まゆこを投げ飛ばした張本人と自分との間に転がっていた。

「何とかして、ステッキを取らないと・・。」

まゆこを投げ飛ばした張本人。
それは身の丈が優に2メートルを越す黄土色の巨人だった。
一見すると人間のようだが、頭からすっぽりやたら生々しい頭巾のような物を被っており顔は分からない。
ただ、まゆこはその巨人が自分をこのまま無事逃がしてくれなさそうなことだけは察していた。
まゆこはまだ痛むお尻や両手両足に喝を入れ立ち上がる。
逃げるにしても、戦うにしてもステッキが無いと厳しいだろう。
そう考えたまゆこは、何とかしてステッキを拾うつもりでいた。

(・・・せーのっ!)

まゆこは一度深く呼吸してから心の中でタイミングを図ると、ステッキ目掛けて飛び掛った。
何となくだが流石にあんな巨体の相手に身軽さで負けることはないだろう。
まゆこはそう考えていた。

「・・・ぎゃっ!?」

現実は残酷だった。まゆこの方が確かに早く動いていた。
しかし、巨人はその体躯の割りには素早く反応しステッキ目掛けて飛び掛る彼女に近寄り蹴りを入れていたのだ。
自ら勢いを付けて攻撃を受ける形になったまゆこはその場に崩れ落ちた。
そして、目から星が飛び出したかのような感覚を覚えその場で暫く動けなくなってしまった。

「がふっ!ふぎゃぁっ!ひぎぃ!!あがぁっ!」
(痛い!痛いよ!死ぬ!死んじゃう!許して!)

巨人は地に崩れたまゆこに間髪入れず殴り掛かってきた。
為す術なく一方的に殴られ続けたまゆこは、気力と体力の殆どを削り取られていた。

「ひゅー・・ひゅー・・・かはっ・・・うぇっ・・・。」

口の中に苦い物がいっぱいに広がっていて気持ちが悪い。
目の前がコーヒーカップにでも乗っているのかと思うぐらいにグルグル回転している。

「あだっ!」

巨人は地に伏していたまゆこの足を掴み持ち上げた。

「ぎゃん!・・・げぇっ!・・・うぁっ!」

そして、まるで棍棒を打ち付けているかのような勢いで何度もまゆこを地面に叩き付けた。

「・・・みぎゃ!・・・あぅ!・・・・かはぁっ!」
(だ・・だめ・・・でも・・・もう・・・。)

まゆこはもう既に限界を超えていた。
2回目ぐらいから既に全身の感覚は殆ど麻痺しており、もはや僅かな気力で辛うじて意識を保っているだけだった。
それすらも叩きつけられ頭が激しく揺れる度に途切れそうになってしまう。
しかし、もしこのまま意識を途切れさせてしまったらその時は二度と戻って来れない深い闇に堕ちてしまうだろう。
まゆこは本能的にそう悟り、必死に耐えていた。

「あ・・・う・・・・ぁ・・・。」
(た・・・助けて・・・誰か・・・。)

まゆこは最後の力を振り絞って両手で何かを探してみる。
そして、何かが手に当たった感覚を僅かに感じた。
まゆこが手に入れようとしていたスタッフだった。
後ちょっとでスタッフを握ることができるという時、非情にもまゆこの身体は再び宙に浮く。

(そ・・・ん・・・な・・・・。)
「・・・・ぎゃあ!!・・・あ・・ぅ・・。」

今まで以上の速度で叩きつけられたのか、一段と激しく頭が揺れた。
この世の物とは思えない寒気と眠気が襲ってくる。
その責めにまゆこは耐えることができず目を閉じてしまった。

(遭難して・・・眠くなるって・・・こんな・・・感じ・・・かな・・・?)

まゆこは堕ちて逝く意識の中でそんなことをぼんやりと考えていた・・。

@後書き
>結局変身できずにすぐそばに落ちてるステッキに手を伸ばしながら力尽きるなんて展開もありだと思ってただけに。

・・・こんな感じですか?分かりません。(´ω`)


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