オープニング[a]

 
キング・リョーナによって引き起こされた惨劇、『第50回バトルロワイヤル』。
それの再来ともいうべき悪夢が、今始まろうとしていた・・・









吾輩はヌコである。名前はまだない。
・・・などという事はない、吾輩の名はグレートヌコスである。
吾輩はリョナラーである。
気がついたら、我輩は嬲り甲斐のありそうな少女がひしめき合う素晴らしい空間に来ていた。
そうなれば、やることは一つ・・・

参加者をリョナるべし!
さっそく、まずはあの少女から頂かせてもらうぞぉっ!!




「ハッ」
褐色肌の少女は、薄暗い部屋で目覚めた。

彼女・・・サリアは困惑していた。
彼女は自宅兼仕事場であるギルドで昼寝をしていた筈だ。
それが何故このような場所にいるのか。

辺りを見渡す。顔見知りはいないようだ。
しかしそこら中には沢山の人がいた。そして皆が自らの置かれた状況を把握できていない様子だった。
ふと背後に気配を感じ、振り返るとそこにはー

「あんさんあんさん」
「へあぁ!?」
燃えている髪の少女。決して比喩表現ではない。髪が本当に燃えているのだ。
「あんさん、何て言うん?ウチ、火乃華て言うんやけど」
「あ、あぁ!あたしはサリアってんだ」
この馴れ馴れしい少女は火乃華というらしかった。
「でさせさ、ウチの髪の毛、どう思う?ボワっとしとるやろ〜」
「あー、だな!で、なんでボワってなってんだ?」
「ふっふっふっ、気になるやろ〜」
「気になるわ〜」
「気になるやろ〜」
「気になるわ〜」

・・・といった会話が結構続いた。どれくらい続いたか、本人達は覚えていない。

不毛なやりとりの途中、怒号が響き渡った。サリアはやり取りもそこそこに、慌ててそちらへ向かった



「おいコラァ!あの女は俺の獲物なんだよ!そこんとこわかれや」
「何を言うか貴様、あれは吾輩の獲物である!」
「あー?ボケた事ほざいてんじゃねーぞゴルァ!!」
「惚けているのは貴様の方であろう!!」
「チッ、まずはてめーからやらなきゃなんねーようだな」
「・・・吠えおったな、ゴミクズの分際で・・・」

どうやら先程の巨大ヌコ・・・グレートヌコスとモヒカン頭・・・モヒカンの二人がなにか言い争っているようだ。
獲物とか何とか言っているが、コカトリス(ニワトリみたいな化け物)やワイルドホッグ(巨大イノシシ)がいないため、何が獲物なのかサリアには分からなかった。

しかしその二人の間に呆れ顔で立ち尽くす青バンダナの女性を認めると、その女性が『獲物』なのだと理解した。


「おいお前、あんなカニバリスト共なんざほっといてちょっとこっちこいよ」
「ん、あぁ」
こうして青ターバンを呼びつけ、二人から引き離してやった。


助けた(?)所で、さっそく青ターバンから情報収集を試みるサリア。先ほどタメ口をきいた事を反省し(もっとも青ンダナの女性ことシルファは気にしていないが)、敬語で話しかける。
「よーし、そんじゃ自己紹介の方、頼みますわ。因みにあたしはサリアっていいます、宜しくおねがいしますぜ」
「あぁ、私はシルファってんだ、よろしくな」
「そんじゃ〜シルファさんよぉ、ここがどこだか分かりますかぃ?」
「いや、私はよくわからないな・・・」
「チッしかたねー、そんじゃこの中に知り合いとかは?」
「そうだな・・・いるかいないかよくわかんねーや、人いっぱいいるし」
「そうっすよねぇ〜」
「どうでもいいけどあんた、話し方がワルの敬語っぽいな」
「そうっすか?」
「どうでもいいけどさ、ウチの髪の秘密しりたくない?」

突然割り込んできた火乃華。シルファは軽くツッコミをいれつつ、彼女に話しかけた。

「いきなり髪って・・・まぁいいや、アンタ名前は?」
「ウチは火乃華いうねん」
「そっか、私はシルファってんだ。よろしくな」

3人の少女は、状況を把握しきれていないながらも和気あいあいと話していた。

この嵐の前の静けさともいうべき状況はしかし、ある男の一言により崩れ去った。

「ようこそ、我が居城へ」




尊大な雰囲気を持つこのこの男は、自らの一言で『我が居城』にいる『参加者ども』が黙ったことを確認すると、ある事を宣言した。


「俺はゴッド・リョーナ、この世界の神だ。
 お前たちは俺に招待された。それは何故か?それはこれから始めるあるゲームの参加者になってもらう為だ。無論、お前たちに拒否権などない。
 いきなりですまんが、ゲームの説明に入らせてもらおう。
 まずはゲームの概要、なにをするか、から説明させてもらおうと思う」

僅かな沈黙。そして、彼は極めて衝撃的な事を伝えた。


「お前たちには今から殺し合いをしてもらう!」




「「「・・・は?」」」
3人は、あまりに予想外かつ突飛な発言に間抜けな声を上げてしまった。
他の皆も、声こそ上げなかったが、誰もが同じことを思っただろう。

『何言ってんだ?コイツ』と。

しかし彼は、最も残酷かつ確実な方法で現実を知らしめる。

ピピピピピ・・・

ふと、参加者たちは火乃華の首についた輪状の何かから音がでている事に気がついた。
首輪から数秒出続ける音。突然、それが「ピーッ」という音にかわり、そして。


爆発した。


火乃華の身体から、なくてはならないモノが消失した。

ついさっきまで話していた、陽気すぎるくらいに陽気な少女。
こんな事になるなど、少なくとも二人は思っていなかった。

サリアとシルファの中で、とても抑えられそうにない感情がうねりをあげ、噴き出した。

「てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

怒りを爆発させ、猛然と神に向かっていく二人の少女。
しかし、二人の首から音がした。

それは二人の歩を止めるに十分だった。



「馬鹿なヤツらだ。俺に勝てるとでも思っているのか?
 いいか、俺は貴様らの首をいつでも爆破できる。それを忘れるなよ・・・?」

悔しさに歯噛みする二人。

この男に、神に命さえも握られている。
参加者は皆、その事を思い知らされた。


音を止め、ゴッド・リョーナは説明を再開する。

「・・・シルファさん」
「あぁ」

ゴッド・リョーナの話を聞きながら、二人の中で誓いがたてられた。

”必ず、この気違いな神を倒す。火乃華の敵を討つ”と。



そんな二人をよそに、説明が続けられる。

「ルールの説明をさせてもらおう!
 まず、君たちは一人になるまで殺しあわなければならない!
 もし12時間の間に誰も死ななかった場合、その場合は全員の首輪を爆破する!問答無用で、だ。大人しくしていれば生き延びることが出来るなどとは思わんことだ。
 一人死んだら、そこからまた初めから12時間がカウントされる。死者が出なかった場合は無論、同様の措置をとらせてもらう。
 生き残りが一人になった瞬間、ゲームは終了だ。最後の生き残りは勝者となり、ある特権を得る。それは『望みの願いを一つだけ叶えてもらえる』という至高の特権だ!
 それとは別に、望むなら『元いた場所への帰還』もさせてやろう!
 そう、生き残りさえすれば帰れるだけでなく望みを叶える事さえできるのだ。殺し合いというリスクにこれだけのリターンを用意してやったんだ、感謝しろよ?

 次はゲームの鍵を握る『支給品』についてだ。 
 今回のゲームでは、君たちにそれぞれアイテムを支給する。
 後ほど、お前たち一人ひとりにデイパックを渡しておく。
 中には、食料、水、照明道具、殺し合うフィールドの地図、筆記道具とメモ用の紙、コンパス、時計、ここにいる参加者全員の名前が書かれた名簿などといったものが入っている。
 要するに生き残るための必需品だ。
 これらを『基本支給品』と称する。
 それとは別に、ランダムな支給品がいくつか配られている!
 気づいているとは思うが、貴様らの武器や防具といった装備品は既に回収させてもらった。
 疑問に思った者もいるだろう、”丸腰でどうやって殺し合いするんだよ”、と。 
 その答えが、ついさっき言ったランダムな支給品だ。
 中には武器、防具、その他あると便利な物やガラクタなど実に様々な種類のものがいくつか入っている。
 これを『ランダム支給品』という。
 ランダムという性質上、中身は当たり外れが激しい。故に外れを引いてしまった者は潔く諦めるんだな。
 そう、つまりお前たちは生き残るための『基本支給品』、殺しあうための『ランダム支給品』、これら2種類の支給品を駆使して殺し合いをしてもらうという訳だ!

 放送についても説明しておこう。殺し合い開始から6時間後、またはその放送からさらに6時間後・・・つまり6時間周期で放送が流れる。
 放送の内容は死亡者の名前と残り人数、それから禁止エリアの発表だ。
 禁止エリアとは即ち『そこに入るのが禁止されたエリア』の事。
 その場所に足を踏み入れたら最後、その者の首輪を爆破させてもらう。
 追加された禁止エリアから脱出するのに間に合わなかった場合も、同様に首輪爆破とさせてもらうから覚悟しておけ。

 最後に補則をいくつか説明させてもらおう。
 参加者同士で手を組んだり、支給品を交換したりするのは自由とする。せいぜいお互いを利用して上手く生き残るがいい、ただし12時間で誰も死ななかった場合は・・・覚えているな?
 もう一つはモンスターの存在だ。フィールドには多種多様なモンスターが生息している。生き残りたくばモンスターにも気をつける事だ。
 警戒するのは勿論、モンスターの存在を逆に利用するのも一興かもしれん。どのように利用するかは語るまい。ない知恵をしぼるがいい。
 
 説明は以上だ!これよりゲームを開始する!」

そう高らかに宣言し、その言葉と同時に、一瞬で部屋にいる者たちは男の前から消え失せた。
男の言葉通り、殺し合いのフィールドに送り込まれたのだ。


そして、バトルロワイアルが開始された。







居城で一人、『神』ゴッド・リョーナはそこに残っていた。

神は見る。これより繰り広げられるであろう、殺戮の狂宴を。



「盛 大に殺しあうがいい!俺の掌の中で踊り狂うがいい!フ、フハ、フハハ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、 ハァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ ハァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」




※バトルロワイアルは6:00から開始されました。






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