「暑い………」
それは当然といえば当然だ、なんといっても砂漠のど真ん中なのだから。
「くそ、ついてない、何でこんなところに………あのやろうぜってぇーぶっ殺す」
魔女ルインザナンはやたらごつい自分のローブを睨みながらつぶやいた。
「あのやろう」というのはもちろん自分をこんなところに連れてきた張本人、ゴッド・リョーナのことだ。
(とにかくまずは支給品の確認をしてみるか………水も支給されているみたいだし)
ごそごそとデイパックの中をまさぐってみると、それらしきものに手が触れる。
出てきたのはビンに入った水だった。
のどの渇きが命じるままに、さっそく一口無遠慮に飲み………すぐに吹き出した。
「これ………海水だ!」
いまいましいビンを投げ捨てると、再びデイパックをあさる。
次に出てきたのはなにやらドロッとした緑色の液体だった。
どう考えても人間の飲み物じゃない。
(くそぉ………そうだ!確か食料もあるんだった、とにかくこのしょっぱい口の中が何とかなれば)
できれば果物の類がベストだ、水分補給もできて一石二鳥………
「……………豆?」
そう、豆一粒。
それが彼女の食料の全てだった。
「ハッ……ハハ、ハハハハハ………」
砂漠の空気より乾いた笑い声がしばらく続いたかと思うと、手のひらの上で唯一の食料が黒焦げになった。
(まぁ……いいや、武器も支給されてるはずだ、そっちがよければ食料なんて簡単に奪い取って………って、何にも入ってないじゃん!!)
いくらデイパックの中を覗いても、探っても、武器らしきものは何一つ入っていない。
本当は二番目に出てきた緑色の液体こそが彼女の支給品なのだが、彼女がそのことに気づく気配はない。
(大はずれってことか、ちくしょお……)
柄にもなく泣きそうになりながら一枚の紙切れを取り出す。
人名がずらりと並んでいる紙、おそらくこれが参加者名簿だろう。
ギラつく太陽の照り返しを手の影でさえぎりながら、一つずつ確認していくと、知っている名前もいくつかあった。
(ミタリー、カレンあたりとは合流したほうがいいな、ルキ、オーガ、グッチョリンはどっちでもいいや、間違っても出会いたくないのは本部の化け猫と東支部の変態)
四天王の中でも前髪とかグッチョリンU辺りなら話も通じただろうが、あの化け猫は問答無用で襲ってきかねない、変態のほうは言うまでもなく本能的に会いたくない。
次に取り出したのはこのフィールドの地図と思しき紙切れだ。
この地図が正しいとすれば、自分が今いる砂漠はそれほど広くないらしい。
(おっ、これはようやく私にもつきが回ってきたってことか)
そう思って荷物をまとめ、行動を起こそうとした瞬間、陽炎の向こうに見覚えのある特徴的なシルエットを見つけてしまった。
前言撤回、今日はとことんついてないみたいだ。
会いたくもないモヒカン頭の変態バカは、それこそあほのようにポカーンと口をあけて私を凝視している、キモイ。
「よりにもよって………な、ん、で、一番最初に会うのがおまえなんだよぉぉーーー!!」
「うおわぁーー!出たぁーーー!!」
奇声を上る変態に容赦なく電撃を放つ。
が、間一髪でかわしやがった……変態の分際で!
「なにが『出た!』だ!それはこっちの台詞だ!!」
「お、おま、おまえ……化けて出るほど俺のこと恨んでたのか、いや、確かにレムウィスの山ではおまえのことリョナろうとしたけど、あれは結局未遂だったわけだし」
「やかましい!人を勝手に殺すんじゃねぇ!」
続けて殺すつもりでさらに攻撃、しかしこれもぎりぎりかわされる………気にくわない!!
「ってか、何でこんなところにいるんだよ」
「はぁ!?テメェも何がなんだか分からんままここに連れて来られたんだろうが!」
「いやいや、そういうことじゃなくて、おまえは確か殺……」
「問答無用ぉぉぉーー!!」
「うごわぁーー!」
私のユピテルサンダーが三度までも避けられた…………何であたらない!!!
「上ぉぉ等ぉぉぉぉだこらぁ!!今度こそあのときの続きをやってやる!リョナりまくってあの世に送り返してやるぜぇぇ!!」
「身の程知らずの変態がぁ!死ぬのはテメェだぁ!」
私は丁度いいストレス発散用品を全力でつぶしにかかった。
「はぁ…はぁ……どうだ、思い知ったか………この、変態が!」
「ち、ちくしょぉ………やっぱ……強ぇ」
熱々の砂の上にひっくり返る変態と、汗だくで荒い息をはく私、こんなところで無駄にヒートアップするんじゃなかったと、いまさらながら後悔する。
しかし、私がここまで汗だくになったのは、何も砂漠の強烈な日差しのせいだけではない。
(この変態、いつの間にこんなに強くなりやがった)
思えば最初からおかしかった。
今までならこんなやつ、最初の一撃で戦闘不能にして一方的にぼこぼこにできたはずだ。
なのに今の戦闘ではユピテルサンダーをちょこまかかわすわ、メガバーン食らっても倒れないわ、一撃がやたら重いわ、五人に分身するという精神攻撃まで仕掛けてくるわで、こっちも油断してたら危ないところだった。
(今回はこの前みたいに魔法を封じられてたわけでもないのに、絶倫ドリンク飲んだってこんなに強くならねぇぞ普通、一体どんなドーピングしやがった)
まぁ、それは今いい、とにかく勝ったのだから。
これで水と食料と武器が調達できる。
とはいえ、武器に関しては期待できないかもしれない、さっきまでこのバカが振り回していたバカでかい斧は私には扱えそうにないだろうし。
「おい変態!私は今ヒジョーに虫の居所が悪いんだ、身ぐるみ全部置いて今すぐ私の前から消えるか、この場で私に跡形もなく消されるかどっちか選べ」
「くそ、分かったよ、消えりゃいいんだろ、消えりゃ」
「身ぐるみ全部置いて、だぞ」
「分かってるよ!うるせぇな!」
「って、それは脱がなくていいんだよボケがぁぁぁ!!」
真っ先に唯一身に着けているパンツを脱ごうとする正真正銘の変態に怒りのユピテルサンダーが直撃する、今度こそ死んだか。
「み、身ぐるみ全部って言ったじゃねぇか………」
チッ、生きてやがった。
しかし本当に何でいきなりこんなに強く………まてよ。
私はすぐさま今の状況を分析する。
1、 予想外に変態が奮戦してくれたおかげで現状私は疲労困憊だ。
2、 この殺し合いには本部の化け猫クラスのやつも参加している。
3、 今の変態は戦力としてはそこそこ優秀である。
……………いやいや!ありえない!!
いくら自分の命が危ないからって、この変態と組むなんて絶対ありえない!
そもそもあんな怪物級のやつがそうゴロゴロいるわけ………
いや、でも、あの化け猫ほど強くなくとも、もう一度目の前の変態ぐらいの実力のやつとやりあうことになったら私は勝てるか?
いやいや、でも、しかし、けれど………
私の頭の中で血みどろの葛藤が繰り広げられている間にも、変態はぶつぶつ悪態をつきながら歩き出してしまう。
決断するなら今しかない………
「おい、まて」
「あぁ?!今度は何だよ!」
私は大きく深呼吸すると、破れかぶれにこう言い放った。
「やっぱおまえ、私について来い」
………血反吐を吐きそうになった。
「はぁ?!何で俺がテメェについていかな……ぎゃほああぁぁぁ」
「二度言わせんな!!」
次に口にしたら最後、私は本当に血を吹いて倒れることになるだろう。
「いくぞ!」
(ちくしょぉぉぉ……このやろうぜってぇーリョナりまくって、犯しまくって、殺してやる!!)
「なんか言ったか?」
「なんでもねぇよ!!」
こうしてここに、相性最悪のリョナラーコンビが誕生した。
ちなみに………
「そうだ変態、飲みのもよこせ!もうのどの渇きが限界だ」
モヒカンのデイパックにはしること書かれた甘ったるい液体しか入っていなかった。
【B−3/砂漠/1日目 6:30〜】
【ルインザナン@リョナラークエスト】
[状態]:疲労(中)魔力残量(中)のどの渇き(大)
[装備]:無し
[道具]:ルインザナンのデイパック(支給品一式、
ベドロウ汁@リョナラークエスト)
[基本]:キングリョーナを叩きのめす
[思考・状況]
1.とりあえずモヒカンと行動(できれば早く分かれたい)
2.砂漠から脱出
3.ミタリー、カレンと合流
※モヒカンがかなり際どいことを言ってましたが自分が死んでいることに気づいてません
【モヒカン@リョナラークエスト】
[状態]:疲労(中)魔力残量(少)
[装備]:ルシフェルの斧@DEMONOPHOBIA
[道具]:モヒカンのデイパック(支給品一式、
乾パン×4、しるこドリンク×3
媚薬入り銃@悪の幹部候補生)
[基本]: 女見つけて痛めつけて犯る
[思考・状況]
1.とりあえずルインザナンと行動(できれば早くリョナりたい)
2.ルインザナンをリョナる
※ルインザナンが生きていることには引っかかってはいますが、聞いたらぶちのめされそうなので黙っておくことにしました。
※参加者目簿、地図は確認していません。
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