オープニング

薄暗い部屋の中、彼らは目覚めた。
部屋の中には40人以上の人がいるはずだが、誰一人として現状を理解してないようだ。

(まあ、当然だけどね。)

彼ら一人ひとりの疑問や不安を浮かべた表情を眺めながら、男は笑う。

(さて、彼らには現状を理解させてあげないとね。)

男はそう考えると、腕を振るった。
途端、男の立つ場所に光が差す。
薄暗い部屋の中でようやく与えられた光源に、部屋にいる者たちの視線は自然とそちらを向く。
彼らの前に現れた男の姿は、20代前半で極彩色のやたらと派手な格好をした優男だった。
頭を疑うようないでたちの男に対して、呆気に取られる者、馬鹿にした表情を浮かべる者、
男の格好を羨ましそうに眺める者など、彼らは様々な反応を見せた。

「やあ、皆さん初めまして!僕はキング・リョーナ!君たちをここに招待した者だ!」

男の名乗りを聞いても反応するものはいない。
そのことに男は少し不満を感じたが、気を取り直して続ける。

「君たちを招待した目的はただ一つ!それは、ここにいる君たち全員でこれから殺し合いをしてもらうことだ!」

その言葉に部屋にいる者たちはざわめき始めた。
彼らの顔に浮かぶのは困惑、不安、怒り、侮蔑の表情。
反応を得られて気分を良くした男はさらに続ける。

「どうやら、君たちはいまいち状況を理解してないようだね。まあ、無理もないさ。
いきなり殺し合いをしろと言われても、悪い冗談にしか聞こえないだろうね。
そんなわけで、君たちに信じてもらえるように用意したのが今君たちの首に着けられている首輪さ。」

その言葉を聞き、彼らは自分たちにいつの間にか首輪が着けられているのに気づいた。

「その首輪には爆弾が仕掛けられていてね。僕の好きなときに爆破できるのさ。
もちろん首輪が爆発したら、君たちは首が吹っ飛んで死ぬだろうね。・・・こんな風にさ。」

そう言って、男が指を弾いた瞬間。

ピピピピピッ

どこからか電子音が鳴り響いた。
その電子音はどうやら一人の少女の首元から聞こえているようだった。
より正確にいうなら、少女の首に着けられている首輪から電子音は聞こえていた。

少女は自分の首輪から鳴り響く電子音に困惑していたが、ふと何かに気づいたのか、
顔面を蒼白にして、男に視線を向けた。

「あ…あの、これって…?」

それに対して、男は満面の笑みを浮かべて、

「爆発まで、あと10秒だよ。」
「!?…ひっ…い…いやあぁぁぁっ!?」

その言葉を聞いた少女は半狂乱となった。
意味不明の叫び声を上げながら男に詰め寄る。

「やっ…いやっ…!死にたくない!やだっ!助けてっ!止めてっ!これ止めてよぉっ!」
その少女の恐怖に錯乱した様子に男は、さらに嬉しそうに表情を歪ませる。
それを見て、少女は絶望した。
この男はどうあっても自分を助ける気など無いと悟ったのだ。
そして、電子音がピ―――ッと鳴り響いた直後、

ボンッ!

いまいち迫力の無い爆発音が響き、少女の首が吹っ飛んだ。

悲鳴があちこちで沸き起こった。
顔を蒼白にする者、腰が抜けて座り込む者、厳しい表情を浮かべる者など様々だった。
傍にいた男は血塗れとなっていたが、男は少女の血を浴びて嫌悪するどころかゲラゲラと笑っていた。
それを見たほとんどの者が思った。

(この男は危険だ。)

この男を何とかしなければ、取り返しのつかないことが起こってしまうに違いない。
だが、首輪がある以上は男には逆らえない。
おそらく男に襲い掛かると同時に首輪を爆破されて終わりだろう。
ほとんどの者がそう思い、男に対して慎重に対応しようと考えていた。

しかし、中には度を越した馬鹿もいたようだ。
薄暗いせいで姿は見えないが、数人の人影が男に対して向かっていくのが見える。
それを見て止めようとする者もいたようだが、彼らは止まらない。
すでに男と彼らの距離は5mほどまで詰められていた。

だが、それに対して男は何の反応も見せなかった。
それを見て、あわよくば彼らが男を何とかしてくれるのではないか、とわずかに期待した者も
いたかもしれない。

「がふっ!?」
「うあっ…!」

だが、男に向かっていった者たちは突然上から何かに押さえつけられたかのように凄まじい勢いで床に叩きつけられた。
彼らと部屋にいる者たちは、その現象に驚愕した。

「やれやれ、僕に逆らうなんて身の程知らずだなぁ。
まあ、これ以上殺し合いの参加者を減らしても僕が困るし、今回は特別に許してあげるよ。」

男はそう言うと、床に押さえつけられていた者たちの拘束を解いたようだ。
彼らは男に対して怒りの表情を向けていたが、さすがに頭が冷えたらしく先ほどのように
考え無しに襲いかかることはないようだった。

「さて邪魔が入ってちょっと白けちゃったけど、今から殺し合いのルールについて説明するから
よく聞いておいてね。」

そんな彼らを無視して、男は再び部屋にいる者たちに殺し合いの説明を始めた。

「まず、君たちは一人になるまで殺しあわなければいけない!
もし最後の一人になることができたら、一つだけ何でも願いを叶えてあげるからね!
それと、最後の一人になった人は元にいた場所に帰りたいなら僕が帰してあげるよ!
これは願いとは別だから安心してね。

それから、殺し合いのために君たちにそれぞれ素敵なアイテムをプレゼントしよう!
一人ひとりにこんな感じのデイパックを渡すから、中身を確認してね。
中には、食料、水、照明道具、殺し合うフィールドの地図、筆記道具とメモ用の紙、コンパス、
時計、ここにいる参加者全員の名前が書かれた名簿が入ってるよ。
それと、これ以外にもランダムな支給品がいくつか配られている!
武器はこのランダム支給品に含まれているよ。
まあ、中身は当たり外れが激しいから外れを引いちゃった人はご愁傷様ってことで諦めてね。
ああ、もちろん今持ってる武器や道具は没収させてもらうからそのつもりでね。

それと、もし24時間の間に誰も死ななかった場合は全員の首輪を爆破しちゃうからそのつもりでね〜。
それと、殺し合い開始から6時間後に僕からのありがたい放送がフィールドに流れるから聞き逃さないようにね。
放送の内容は死亡者の名前と残り人数、それから禁止エリアの発表だよ。
禁止エリアっていうのは文字通りそこに入るのが禁止されたエリアのことだよ。
その場所に足を踏み入れた場合、首輪が爆発しちゃうから気をつけてね。
ちなみに、参加者同士で手を組んだり、支給品を交換したりするのは自由だからね。
せいぜいお互いを利用して上手く生き残りなよ?

説明は以上!それじゃ、殺し合いのゲームを開始するよ!
皆をフィールドにワープさせてあげるね!」

その言葉と同時に、一瞬で部屋にいる者たちは男の前から消え失せた。
男の言葉通り、殺し合いのフィールドに送り込まれたのだ。


そして、バトルロワイアルが開始された。




【鈴木さん@左クリック押すな!! 死亡】
【残り51名】



※バトルロワイアルは朝6時に開始されました。
※キングに向かっていった参加者たちが誰なのか、何人なのかは不明です。
 (人数は少なくても二人です。)
※床に叩きつけられた参加者たちは大きなダメージは負っていません。

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