「…ぅ……」
重い瞼をゆっくりと開ける。
何回か瞬きをするのに比例して、意識が覚醒していく。
「…どこだ、ここ…」
自分は何故か気球の中で寝ていたらしい。
体を起こして辺りを見回せば、近くに海岸が見える。
気球から外に出てみれば、最高の景色。
紺碧の海、香る潮風、さざめく波の音。
旅行としては絶好の場所である。
…現在実行中の悪魔のゲームがなければ、の話だが。
自分は確か昨日、自室のベッドで眠りについていたはずだ。
それが起きてみたら何だ。
見知らぬ部屋に集められ、変な男にいきなり「殺し合いをしろ」と言われるなんて誰が想像できただろうか。
「つーかあいつ…何モンだ?」
考えなしに向かっていった自もちょっとは悪いと思うが、いきなり押さえつけられるとは思わなかった。
あれは人間技じゃねぇだろ絶対。ひょっとすると宇宙人とか?いや、何のために?
「………あ、ヤベ」
暫くの間海岸をうろついていた明空だが、何かを思い出したように気球へと走りながら引き返していく。
頭の中に、先程の部屋の中での冥夜の言葉が思い出されたためだ。
男がルールの説明をしている時、唐突に隣にいた冥夜に引き寄せられた。
「うわっ…、ちょっと、何すんだよっ」
思わず小声で抗議する。
が、冥夜はそんな兄の様子に構うことなく、小さな声で、しかし有無を言わさないように話す。
「いいか、フィールドに飛ばされたら、まず一番目立たないような建物に向かえ」
「へ?何で?」
「いいから!分かったな!」
その言葉に首を傾げた途端、急に周りが光に包まれ、気付いたらこの場所にいたのだ。
結局冥夜がなぜあんなことを言ったのかは分からず仕舞いだったが、実行してみる価値は充分にあるだろう。
冥夜のことなのだから、きっと何か意味があるはず。
気球からデイパックを引っ張り出し、中から地図を探して砂浜に広げる。
「えーっと…目立たない、目立たないところは…っと」
【昏い街】。
…街って目立つし、そもそも建物じゃない気がする。
【廃虚】。
…これもちょっとなぁ。怖い。なんか出そうだし。
「……ん?」
地図とにらめっこしていると、とある一点で目が留まる。
…【古い木造校舎】。
姿形が、どことなくあの小学校に似ていた。
自分と冥夜の出身校である紫琉小学校。
「…ここでいいや」
木造だからきっと目立たない(と思う)し、見慣れない場所で動くよりはマシだろう。
地図をデイパックにしまい込み、明空は立ち上がった。
「あ、そういや武器持ってなかった」
デイパックを下ろし、中をガサゴソ探ってみる。
脳内ではお昼の御機嫌ような番組でサイコロを振る時のテーマが流れている。呑気である。
「…ツルハシ?」
デイパックから出てきたのは、工事現場などで使うような普通のツルハシだった。
武器としては申し分ない。
「ま、何とかなんだろ」
ツルハシをしっかりと握り、改めて木造校舎への道を歩く明空であった。
【A-1:X3Y3/海岸/1日目:朝】
【明空@La
fine di
abisso】
[状態]:正常
[装備]:ツルハシ@○○少女
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6/6・水6/6)
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.古い木造校舎へ向かう。
2.冥夜を捜す。
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