スライムと聞くと何を思い浮かべるだろうか
化学の時間に作った覚えのある人もいるだろう
工事の最中に生じる廃棄物だと答える人もいるかもしれない
だが、最も多いと予想される答えは
ゲームやファンタジー世界に度々登場する
「彼ら」を思い浮かべることではないだろうか
「殺し合いのゲーム」だから襲われることは必然だと心に留めてはいたのだが
カーラマン・フロッシュ(22)は突然の奇襲に我を失っていた。
「うぐ・・・ぐぅう・・・うっ・・・」
暗い部屋とはいえ、集められたのは人間ばかりだった記憶があった。
これも、奇襲を防ぐことの出来なかった要因の一つと言えるだろう
現在彼女の首から上をすっぽり覆っているのは緑の半透明な生命体、
暗い森の獣道を歩んでいた彼女の頭上に突如降り注いだ悪夢の正体である。
木々の合間合間から漏れる光が彼女の苦悶の表情を映し出す。
「くぅぅっ・・・っう・・・むぅうっ!!!」
声にならない悲鳴が森の闇に消えていく。
ジェル状の身体が頚動脈を圧迫し、粘液が鼻と口を塞ぐ、
必死にもがく彼女をあざ笑うかのようにスライムは伸縮自在の
身体を彼女の身体に這わせてくる。
もがけばもがくほど酸素は消費され、脳内の冷静な思考までも失わせていく。
そして追い討ちをかけるように、スライムの伸びた肢体が彼女の身体を
まさぐろうとしていた。
「ぐうぅうぅっ!!!うーっ!!!」
なんとか払いのけようと身体を横に倒し、ごろごろと地面を往復する。
だが、弾力性のあるスライムの肉体を引き剥がすことは叶わず、
余計に体力を使った挙句、立ち上がることの出来ない状況に立たされてしまった。
スライムの泥状のしわは勝者の笑みと変わり、やがて彼女の肉体を
覆い尽くそうとしていた。
「(もう・・・駄目なのですか)」
薄れゆく意識の中、彼女が最期に見た光景は半透明の液体を通した
虹色の濁った景色であった。
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