人の良心信じる無かれ


明空は商店街を歩き回っていた。
冥夜に言われたことは覚えていたが、せっかく近くに商店街があるのだから
何か役立つものでも探してから行こうと考えたのだ。

(これって、つまりはサバイバルだろ?なら俺でも必要なものくらい分かるさ。)

あまり頭のよろしくない明空でも、簡単なサバイバル知識くらいはある。
以前、冥夜に教えられたことがあったからだ。
…もっとも、半分も覚えてはいなかったが。

「えーと、たしか水と食料が一番必要って話だったな。
デイパックにも入ってるけど、念のためにもうちょっと入れておくか。
あと、ナイフとかの刃物が必要とか言ってたような…。
火をつけるものとかもあったほうがいいんだっけ?」

明空は普段あまり使わない頭を懸命に働かせて、今必要なものを考えた。
そして明空はコンビニで適当な食料とジュースを、ホームセンターで包丁、ライターを、
薬局で傷薬と包帯をデイパックに押し込んでいった。

「ま、こんなとこだろ。しかし、財布が取られてなかったのはラッキーだったなぁ。」

明空はそれぞれの店でちゃんと金を払っていた。
こんな非常時でも金をちゃんと払えるのはご両親の教育の賜物であろう。
もっとも、あまり…というか全く意味のない行為ではあったが。

(しっかし、商品とか全然置かれてねーなぁ。店の人、商売する気あるのか?)

明空の言うとおり、今までに回った店にはほとんど商品が置かれていなかった。
特に刃物の類はほとんど見つからず、包丁一本探すのにもかなり苦労したのだ。

「まあいいや。それよりけっこう時間かかったし、早く行かないとな。」

そして、明空は改めて古い木造校舎に向けて歩を進め始めた。

(冥夜のやつ、大丈夫かなぁ。まあ、アイツが危なくなるとこなんて想像できないけど。
 …ていうか、よく考えてみたらあんなヤツの言った通りに殺しあう人なんて本当にいるのか?)

キング・リョーナという男が言った殺し合いをしろという言葉が冗談であるとは思っていない。
実際に、あの男は少女を一人殺したのだ。
あそこまでしておいて、実は冗談でした、なんてほざいた日には死ぬまで殴り続けてやるところだ。

だが、あの男がたとえ本気だとしても参加者たちがそれに従うだろうか?
いくら首輪を付けられて脅されたとしても、人が簡単に人を殺したりするだろうか?

明空にはそんなことは信じられなかった。
むしろ、自分たちをこんな殺し合いに放り込んだキングに反抗し、殺し合いを破綻させるために
一致団結することが普通ではないかと考えていた。

「…うん、そうだ!やっぱり殺し合いなんて起きるわけねーよ!
あんなやつの言うとおりにする人なんているわけないって!」

明空は自分の考えに何度もうんうんと頷いた。
普通の人なら、このような異常な状況の中で明空のように楽観的に考えることはできなかった
かもしれないが、明空ならではのお気楽&足りない頭による思考の結果、こんな殺し合いに
乗る人物は存在しないという結論に達してしまった。

「よし!だったら、後はあのキングとかいう馬鹿をぶっ飛ばすだけだな!
さっさと冥夜と合流して、仲間を集めて、キングを倒す!それで、皆でここから脱出だ!」

明空はそう言って、森へ向かって走り出す。
その顔には笑顔が浮かんでいる。
すでに明空の中では、この状況は絶望的な脅威というほどのものでは無くなっていた。
冥夜やここにいる参加者の人たちと力を合わせれば、かならずここから脱出できると
信じきっていたからだ。

だが、明空は知らない。
この島で殺し合いに乗っているものが少なくないことに。
そして、すでに殺し合いが起こっていることに。

その顔から笑顔が消えるときはそれほど遠くないかもしれない。




【B-2:X2Y2/森/1日目:午前】
【明空@La fine di abisso】
[状態]:正常
[装備]:ツルハシ@○○少女
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6/6・水6/6)
おにぎり×4、ランチパック×4、弁当×2、ジュース×3
包丁、ライター、傷薬、包帯
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.古い木造校舎へ向かう。
2.冥夜を捜す。
3.殺し合いに乗る人なんているわけがない。

※殺し合いに乗る参加者はいないと思っています。
 殺し合いの現場か死体を目撃するか、もしくは
 それを他の参加者から聞けば考え直すと思われます。


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